<城が語る>ハリルJがW杯王手も引き分けイラク戦で浮き彫りにした問題点
体力を奪うテヘランの酷暑に、強く吹く風。風は肉体の水分を奪うのでなおさら体力の消耗を激しくする。しかも、後半には、井手口が接触プレーで頭を打ち、酒井宏も負傷交代。ケガ人が続出する非常事態の敵地で1-1のドローで勝ち点1を奪ったことは評価しなければならない。しかし、手中にあった勝ち点3をスルリと逃してしまったゲームに、ハリルジャパンが抱えている問題点がいつくか浮き彫りになった。 前半8分に大迫が先制ゴールをマークすると、明らかにディフェンスラインが下がり全体的に引いた。体力の消耗を避けたいという意識と、守備ブロックを作れば、傷口を広げることがないんだ、という過信が重なり、しかも強風でボールが伸びたこともあって、極端に言えば、10メートルは下がったのではないか。 中盤にスペースが生まれ、セカンドボールを拾われ、ボールをつながれ、そこへのアプローチができなくなり完全にイラクに主導権を譲った。コンパクトなディフェンスシステムが崩壊してしまっていた。実はラインをキープしてボールを保持しているほうが、疲労度、消耗度は少ない。守備に徹する方が体力を失うのだ。 同点に追いつかれたシーンは、吉田、川島らのケアレスミスだが、先制後に、ほとんどシュートシーンを演出することができず、あれだけイラクにペースを渡してしまえば、崩されたわけでなくとも、こういうひとつのピンチで、どこかがほつれるものである。 この試合では、香川のケガや、山口蛍、今野のコンディション不良から、ベスト布陣は組めなかった。中盤をやられる恐怖心から原口をトップ下に使い、「潰す」という点で、非凡な力を持つ井手口、遠藤の若い2人にボランチを任せた。彼らは、その長所は生かしたが、まだボールは回せず、ゲームメイクはできない。そういう事情を考えるとハリルホジッチ監督が、ベンチからしっかりと指示を出して狂ったチームバランスを元に戻さねばならなかっただろう。 ハーフタイムで、「後半の立ち上がりの10分間に追加点を取りいく」という姿勢を指示しても良かったのかもしれない。いずれにしろ、そういうゲームマネジメント力がチームとして決如しているのだ。 チームとして、どう勝つか、という勝ち方を考え、確立しなければ、ここから正念場となるオーストラリア、サウジアラビアとの2試合も苦しくなる。 5試合ぶりに先発抜擢された本田は、前半は持ち前のキープ力を生かして攻撃の起点となり、酒井宏のオーバーラップもあって右サイドからイラクディフェンスを何度か崩した。酷暑の中、守備面でも仕事はしていた。だが、スピードが足りない。シリア戦ではインサイドハーフで起用されてチームにプラスの相乗効果を生んだが、この日も、もっとインサイドでプレーしてよかったと思う。一方、長友の左サイドから崩すシーンはあまり見られなかった。技術面、体力面を含めて長友が少し精彩を欠きつつあることも気になった。