<城が語る>ハリルJがW杯王手も引き分けイラク戦で浮き彫りにした問題点
先制ゴールをヘッドで決めた大迫の急成長ぶりは際立っている。 彼がボールを持つと何かが起こりそうな期待感がある。ボールの収まり方が独特で、後ろに下がるのか、反転して前にいくのか、ディフェンスの立場からすると予測が難しく、ボールを奪い辛い。鹿島時代に比べてプレーヤーとしての“間合い”が深くなった。海外でプレーして体が強くなったというような単純なものではなく、足が長く俊敏性もある海外の選手に揉まれる中で、そういう技術を身につけたのだろう。 だが、大迫、久保、原口の連携には物足りなさを感じた。 後半10分にも、原口が持ち前の推進力でドリブルで敵陣を割り、大迫へつなぐが、ファーストタッチをミスして決定機を逃した。ヨーロッパの所属チームでも、結果を残している3人の個の能力は間違いなく向上している。しかし、所属チームでの得点パターンを日本代表チームで発揮できているか? と言えば、まだそこまでの距離感とタイミングはない。原口にしても、前へ進むスピードは素晴らしいが、そこに2人が絡めない。ワンタッチでポンポンと展開するようなシーンも見られない。久保にしても生かすパスが出てこない。 この3人の連携が深まれば、もっとチームの得点力は上がると思う。 8月に埼玉で行われるオーストラリアに勝てば、6大会連続のW杯出場チケットが手に入る。だが決して楽な相手ではない。日本が勝ち点1に終わったことで、直接対決を残している2チームのモチベーションがアップしたことは間違いない。9月の敵地で行うサウジアラビアも含めて「2つのうちひとつを勝つ」という考え方で臨めばいいと思う。もし連敗でもして、プレーオフに回ると、さらに厳しい状況になってしまうのだ。どちらに転ぶ可能性もあることだけは肝に銘じておきたい。 (文責・城彰二/元日本代表FW)