「自民党支持層」と「自民党員」で“世論調査”の結果が異なるのはなぜか 「高市」急伸「小泉」伸び悩み「石破」リードの結果から見える党員の怒りと悩み
総裁選への「関心度」の違い
回答者を自民党支持層に絞って見ると、小泉氏への支持が増える一方、石破氏は大きく変わらない傾向になっていた。例えば、9月6日から8日にかけてNHKが行った世論調査では、全体で石破茂氏への支持が28%、小泉進次郎氏への支持が23%、高市早苗氏への支持が9%だったのに対して、自民党支持層に絞って見ると、石破氏への支持は29%、小泉氏への支持は27%、高市氏への支持は13%となった。小泉氏への自民党支持層の支持は全体よりも4ポイント高い。近い時期に行われた、朝日新聞(8月24・25日)、JNN(9月7・8日)、読売新聞(8月23・24・25日)などの調査でも同様の傾向があった。この時期、各社世論調査では自民党支持層において小泉氏への支持がジャンプアップする傾向が大きかったことが見てとれる。 だが、自民党員への調査結果を見ると、やや様相が異なる。日本テレビが自民党員・党友に対して行った調査を見ると、9月3・4日、9月12日のいずれの調査でも石破氏が小泉氏を一定程度上回る支持を得ていた。 この間、世論調査で自民党支持層に絞り込んだ結果が盛んに報道されたのは、総裁選に投票権を持つ自民党員の支持動向と、自民党支持層のそれが近いものと考えられていたからだ。だが、今回については、必ずしもその「定説」が当てはまらないようだ。 そのズレを見極めるうえで、ヒントとなりそうなポイントのひとつが、回答者の総裁選への「関心度」の違いである。 朝日新聞が8月24・25日に実施した世論調査によれば、総裁選に「関心がある」とした人は石破氏25%、小泉氏20%と石破氏が多かった。一方で「関心はない」とした人で見ると、小泉氏23%、石破氏14%の順に逆転している。つまり、総裁選に関心がある人の中では石破氏への支持が多く、関心がない人の中では小泉氏への支持が多かったのだ。
自民党員の実像とは
こうしたことから、筆者は以下の2つの仮説を導き出した。 (1)世論調査で全体から「自民党支持層」のみに絞り込んだ時に小泉氏の支持が増えるのは、石破氏を支持する傾向が強い野党支持層の回答が排除される一方で、ライトな自民党支持層が小泉氏を支持する傾向が強く浮かび上がっているからだ (2)一方で、自民党支持層の中でも、実際に総裁選の選挙権を持ち、関心の高い党員に絞ると石破氏を支持する傾向が強い。このため、小泉氏の党員支持は常に石破氏に劣後してきた これらの仮説を裏付けるかのような解説をしたのが、元自民党本部事務局長で、長年選挙に関わってきた久米晃氏だ。 9月12日に、BS-TBSの「報道1930」にインタビュー出演した久米氏は、自民党員について「中高年の男性が多い」「60%が地域党員、40%が職域党員で占められる」「政治的関心は普通の国民有権者より高い、保守的な無党派層のよう」などとその特徴を述べた。ちなみに、職域党員とは主に業界団体などに由来する党員である。地域党員とは、各議員が地元で集めた支援者らが党員になったケースだ。 本稿では党員向け調査の仔細な点に触れることはできないが、これらの指摘には頷けるところが多く、党員の実像を正確に捉えていると感じる。 世論調査や選挙の情勢調査をつぶさに見ていると、イデオロギーの違いを問わず、男性の方が女性よりも「支持政党」や「投票先」をはっきりと決めている傾向が強い。また、年齢が上がるほど支持・投票態度が明確な人の割合が高まる。とりわけ年齢層別の政治意識の違いは、世論調査だけでなく、実際の各級選挙での年齢層別の投票率の違いからも明らかだ。