もう電話かけてこないで!入院先で認知症の女性と同室に…娘との電話に感じた「ひとりっ子」と介護
何を相談したいかわからない。介護認定を受けるまで
にしおかさんが、何の知識もなく介護生活をスタートしたことは、本を読んで知っていた。 コロナ禍で収入がゼロになったにしおかさん。実家に帰省すると、ゴミ屋敷と化していた部屋の中で、埋もれるようにしてお母さんが座っていた。 その姿を見た彼女が家の惨状を責めると、お母さんは耳を疑うような暴言を叫び出したという。 「あー!もう嫌だ! 嫌だ! 嫌だあ!! 上等じゃねぇか! 頭かち割って死んでやるー!」(「ポンコツ一家」文中より抜粋) これはただごとではないと察し、にしおかさんはすぐに同居を決意した。 それから約5年。 最近、介護認定を受けるために調査員とお母さんが面談を果たしたことを話してくれた。 5年間も一人で支えていた理由とは、そして今になって面談をしたきっかけはなんだったのか。トークを一部ご紹介していこう。 にしおかすみこさん(以下、にしおか)「実家に戻ったころ、友人に地域包括支援センターに相談してみたらと教えてもらったんです。私はそれまで存在さえ知りませんでした。 でも今のところ母はどこかに行って迷子になるわけではないし、寝たきりでもないです。ただ私、毎日しんどいし、疲れてました。どう困っているかを考える気力もなくて、何を相談していいのか分かりませんでした。そのことを友人に伝えると、それをそのまま伝えればいいんだよ、と言ってくれました」 高口光子さん(以下、高口)「皆さん最初はそうなんですよ。何を相談したいか明確な人の方が少ないんです。 むしろ、私たちは突然始まった介護生活に戸惑い、助けてと声が出せないでいる方たちのために、存在したいと思っています」 にしおか「相談してよかったです。その時、何が解決したということではないです。でもプロの方に聞いていただくことで、毎日のことだけでなく、まだ起きてもいない将来の不安を想像して、その想像に疲れているんだということに気づけました。 後日、地域包括支援センターの職員さんが、ウチに家族の様子も見に来てくださいました。 そこからです。私はいろいろ考えたり、ダラダラしたり、嫌気がさし毎日ズルズルしながら流され、要介護認定を取らなかったんです。で、ごく最近です。動きました(笑)。 とある日の会話で、母が、 『県民共済があるからウチは大丈夫だよね?』 って。もうすぐ給付が切れるタイミングだったので、何となく私も、 『いや、もう終わるよ。でも介護保険ってあるよ。それあると家族皆、助かるよ』 って返したら、 『それいいじゃない。何ですぐやらないの?』 ってなったんです。いやいや、頭カチ割って死んでやるって言ってただろうって思いましたけど(笑)。今、母は前向きだ、これはチャンスだと思い、地域包括支援センターへ申請に行きました」 介護認定がおりたら、等級によってさまざまな支援を受けることができる。しかし、その資格をもらうためには、調査員と認知症の方が実際に会って、どの程度症状が進行しているかを調べるための面談が必要なのだという。 にしおか「後日、調査員の方がウチに来ました。たくさんの質問に母は答えていくのですが、いつもよりシャッキリして、凄く頑張ってました。見栄も張ってました。内心、ガンバレ~って思いました。でも、いつも通りじゃないと正しい判定が出ないので、困るなあ~とも思いました。それらも含めてプロの方はちゃんとわかってくださっていました」 高口「表面が取り繕えるのも、認知症の方あるあるなんです。でも階段の上り下りや、お茶の淹れ方など、些細な仕草を見ればプロは気づくはずですよ」 にしおか「そうなんですね~。ウチに来てくださった調査員の方も、母のプライドを傷つけないような対応をしてくださいました。 それとですね、実は事前に、地域包括支援センターの職員さんからアドバイスをいただいていたんです。普段の母の様子をメモしておいて、調査員の方にこっそり渡すといいですよって。その通りにしました。結果は、要介護1でした」