マスコミ対応のプロが斬る! 不倫夫の妻、謝罪の成功例と失敗例
立派な行動なのに批判されるのはなぜ?
乙武さんの妻、仁美さんが夫のために一緒に謝罪し、引き続きの応援を依頼する姿は素晴らしい、という評価があります。おそらく彼女は本当にとても立派な方なのだろうと思います。しかし、彼女が立派に見えれば見えるほど「妻があんなに素晴らしいのに。不倫だけならまだしも妻にも謝罪させるといったさらなる負担をかけるとは」と夫の対応への評価を低めてしまいます。つまり、不倫そのものへの批判ではなく、その後の対応への批判というあらたなクライシスを呼び起こすことになるのです。 これは専門的な言葉を用いると、クライシスコミュニケーションの失敗となります。クライシスコミュニケーションとは、クライシス(危機)発生時のダメージを最小限にするコミュニケーション活動(情報発信、説明責任等)のことで危機管理広報とも言います。ここで失敗すると対応がよくないといった新たな批判が起こるのです。選挙に出る予定があったのであれば、関係する組織の広報担当者がクライシスコミュニケーションの観点からアドバイスできていたらよかったのだろうと思います。
しぶしぶ許すのは「ありがち」でよい
では、どうしたらよかったのでしょうか。ミュージシャンの石井竜也氏はありがちな対応でうまく収束したといえるでしょう。自分のファンと不倫していたことを報道されたことに対し、16年3月17日、自身の公式サイトで軽率な行動であったと謝罪コメントを公表しました。追いかける報道陣に対しては、妻のマリーザさんと二人で手をつないで登場し、それを撮影させた上で、妻を車に乗せた後、一人で報道陣に一礼し、軽率な行為であったと短くコメント。自分もさっと車に乗って去りました。 なかなかうまい。妻と手をつないでいるということは、妻が許していることを十分表現しています。不倫は妻が許していれば他の人がとやかく言うことではありませんから。マリーザさんはしぶしぶ承知して手をつないでいた可能性はありますが、これはいかにもありがちな対応で共感できるのです。 「許したくはないけど、これ以上報道されたくないし、子どもも傷つくから。手をつなぐくらいは協力するか」と。