中国の研究チーム、植物の病気対策に役立つ低分子を発見
【東方新報】中国の科学者たちが、植物細胞内で免疫反応を誘発する可能性のある小さな分子を発見した。 特許を取得したこの分子は、「バイオ農薬」として幅広く開発される可能性があり、農作物など植物が病気にかかるのを防ぐのに大いに役立つという。 発見に成功した「中国科学院分子細胞科学卓越創新センター(Center for Excellence in Molecular Science of the Chinese Academy of Sciences)」の研究チームは「この生物農薬が実用化されれば、植物の表面に散布され、植物に吸収された際に機能する。すでに確立されている科学的知識に照らし、様々な植物に適用でき、植物の多くの病気に効果があると思われる。この低分子(別名:小分子)は植物自体が作り出すものゆえ安全だ。適切に使用すれば、植物や人間、生態系に害を与えることなく病原体の侵入を抑制することができる」と説明している。 この研究結果は「植物と細菌のTIR免疫シグナル伝達によるヘルパーNLRの活性化」と題され、15日に発行された科学誌「サイエンス(Science)」に掲載された。 研究チームは、細胞内に150個近い免疫センサーを持つ実験室モデル植物「シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)」を用いて研究を行った。 異なるセンサーが対応する病原菌に反応して同じ低分子の「2環状アデノシン二リン酸リボース(2'cADPR)」を生成し、これが植物の抗病害性を引き起こすのだという。 特定のセンサーは特定の病原体に対してのみ植物を防御できるため、複数の病原体に対して効果的な広域スペクトル耐性を実現することが、植物免疫研究における重要な課題だという。 研究チームはこの問題について「センサーは特定のものだが、いずれも活性化すると『2'cADPR』を生成する。この低分子の生成がセンサーの特異性を回避し、広域スペクトル耐性が実現される」と説明する。 チームが発見したこの低分子はすでに特許を取得し、生産段階に入っているという。そして次のステップとして、実際の広域スペクトル抗病害性を現場で証明し、できるだけ早期に実用化することだとしている。 同じく「サイエンス」で同時に発表したもう一つの研究論文「標準的なタンパク質複合体が免疫恒常性と多病原体抵抗性を制御する」では、イネにおける同じ免疫経路の広域スペクトル効果を検証している。 過去には農作物の害虫や病気に対する抵抗力は主に化学農薬に頼っていたが、それは環境に害を与えるだけでなく、人間の健康にも一定のリスクをもたらしていた。 植物の免疫反応の強化と「バイオ農薬」の研究開発は、従来の農薬の環境と人間の健康への害を同時に解決する画期的なブレークスルーとなる。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。