【箱根駅伝】駒大エース佐藤圭汰「力通り走れば」約10カ月ぶり実戦「地獄」から区間新
<第101回箱根駅伝>◇2025年1月3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ) 往路4位からの巻き返しを狙った駒大は、10時間44分7秒で2年連続の2位だった。青学大に総合優勝は譲ったものの、復路5時間20分50秒は大会新記録を樹立。2大会ぶりの復路優勝で地力を示した。ケガから約10カ月ぶりに実戦復帰した佐藤圭汰(3年)が、7区で史上初の60分台となる1時間0分43秒の歴史的快走を披露。区間新記録で一矢報いた。今季の3大駅伝は全て2位。来年の覇権奪還へ、完全復活のエースが闘志を燃やす。 ◇ ◇ ◇ 佐藤はばったりと倒れ込んだ。限界を迎えた顔に、全力を出し尽くせたことへの充実感が重なる。「自分の力通り走れば、1分は更新できると思っていた」。弾むような快走で、20年に明大の阿部弘輝が記録した1時間1分40秒の区間記録を1分近く更新。スタート時点で4分以上あった首位との差を1分40秒差にまで縮め、復路優勝に導いた。「貢献できたことが本当にうれしくて」。復活のエースが胸を張った。 逆境が強くした。昨年の4月に恥骨の疲労骨折が判明。2カ月の休養を経て復帰したが、夏合宿後に再発した。「地獄。絶望しかなかった」。1度は心が折れかけたが、尊敬するパリ五輪5000メートル金メダルのインゲブリクトセンの動画などから「落ち込んでいてもケガが早く治るわけではない」と原動力をもらった。 大八木総監督が「自己管理の部分で成長した」と認めるように、基礎を一から見直した。内転筋や尻の筋肉を強化し「以前よりも楽にスピードが出せるようになった」。本格的な練習再開はわずか2カ月前だが「自信はあった」と短期間で戦える体に仕上げた。 ちゃめっ気たっぷりな愛されキャラだ。レース前に明らかに顔がこわばっていても「緊張してないよ」と照れ笑い。ケガで出走できない期間には、先輩の部屋を度々訪れ「早く走りたいっす」と語り合うなどいつも競技に一途だった。この日の朝、仲間たちに「自分を信じて。絶対に期待に応えます」とLINEで決意表明。歴史を塗り替えて真っ先に出た言葉は「後ろには後輩が続く。新記録でつなげてよかった」と思いやりにあふれる一言だった。 184センチの大きな体に、夢を乗せる。前回大会で3区の最後に首位を明け渡した悪夢を払拭(ふっしょく)したが、当然「優勝を目標にしていたので悔しさもある」と慢心はない。来季は最上級生。「『優勝』をもう1度目標にしてリベンジしたい」。状態はまだ「70%」。復活のエースが再び、藤色を常勝軍団へと押し上げる。【勝部晃多】 ◆佐藤圭汰(さとう・けいた)2004年(平16)1月22日生まれ、京都府出身。京都・洛南高時代には1500メートル、3000メートル、5000メートルの3種目で高校記録を樹立。3年時の全国高校駅伝ではエース区間の3区で日本選手歴代最高記録を更新。駒大1年時の22年に5000メートルのU20日本記録を、23年に5000メートルの室内日本記録を更新。将来の目標は「五輪でメダル」。身長184センチ。