「かなりの不安を抱えていた」黒田剛監督による“懸命の修復作業”が奏功! 土壇場で息を吹き返した町田、最後の抵抗は注目に値する【コラム】
「自分たちのサッカーをあらためて確認できた」
いよいよ大詰めを迎えている国内のリーグ戦は、明治安田J3リーグで大宮アルディージャ、同J2リーグで清水エスパルスが相次いで優勝を決め、残るは3クラブがタイトルを争う同J1リーグだけとなった。その一角であるFC町田ゼルビアは、国立競技場が舞台となった11月9日のFC東京との“東京ダービー”(第36節)で、白崎凌兵、オ・セフン、相馬勇紀の得点により3-0と快勝。翌10日にヴィッセル神戸が東京ヴェルディと引き分けたこともあって、初昇格・初優勝の快挙に望みをつないだ。 【画像】ゲームを華やかに彩るJクラブ“チアリーダー”を一挙紹介! 町田はこの試合までの5試合で勝ちがなく(2分け3敗)、その始まりとなった第31節で首位から陥落し、さらに第32節では3位へ順位を下げていた。FC東京戦を前に首位の神戸とは7勝点の開きがあり、負ければ優勝の望みは消滅。黒田剛監督は「かなりの不安を抱えていた。選手たちも足踏み状態が続いていた」と胸の内を語るなど、まさに背水の陣だった。 この大一番に備えて、黒田監督は「何度も映像を見せて選手たちを奮起させた」と、懸命の修復作業を行なったという。そして「選手たちの特長が出る形とゲームプランを構築しながら送り出した」。選手たちもそれに応えるように、久々に躍動。11月の代表ウイークで韓国代表に招集されたオ・セフンは194センチの長身を生かした空中戦でFC東京DF陣を悩ませ、3試合ぶり出場のエリキはオ・セフンが落とすボールを拾ってチャンスにつなげた。 15分の先制点もそのような形から。エリキがタイミングを計り、後方から走り込んでくる白崎に正確なパスを合わせた。その白崎は49分、ゴールラインを割りそうな相馬勇紀のクロスを諦めずに追って折り返し、オ・セフンががら空きのゴールに難なく追加点を押し込んだ。 いずれの場面もFC東京DF陣は動きで後手に回り、ピーター・クラモフスキー監督は「簡単な得点を与えてしまった」と嘆いた。町田は守備でも集中力あふれるプレーを披露。センターバックのチャン・ミンギュがディエゴ・オリヴェイラを、アンカーの下田北斗が荒木遼太郎の動きを封じ、「彼らのプレーが肝になった」と黒田監督。ドレシェヴィッチの危機察知力、昌子源の球際の強さも無失点勝利に貢献した。 このところの町田は、ロングスローによる攻めが一部で批判され、それを巡る相手チームの対応が物議を醸すなど、順位の下降も相まって負のイメージがつきまとっていた。だが、FC東京戦はそうしたモヤモヤを吹き飛ばす素晴らしい勝利だったと思う。選手たちが集中力を切らさず、与えられた役割をしっかりと果たして「自分たちのサッカーをあらためて確認できた」(黒田監督)意義は大きいだろう。 次節は少し間が空いて11月30日、ホームの町田GIONスタジアムに京都サンガを迎える。たとえ勝ったとしても、同日に勝点5差の神戸が柏レイソルを破ってしまえばタイトルに届かない。優勝へ他力本願の戦いが続くものの、土壇場で息を吹き返した町田の最後の抵抗は注目に値する。 取材・文●石川 聡
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