アートディレクター大島依提亜 知られざる映画ポスターの世界
WWD:ジム・ジャームッシュ監督の特集上映“レトロスペクティヴシリーズ”のポスターも作られていましたね。
大島:「パターソン」の仕事をした流れで依頼をいただきました。通常は数個の代表作を選んで数枚のポスターを作るところ、一作ずつ作らせてほしいとお願いしました。どの作品もポスターの余白を活かしながら、横位置で写真を置き、物理的にぼかした粒子感の強い文字を載せて、彼の作品に共通するオフビートな雰囲気を伝えています。最初にお話したように、ジャームッシュは、僕が映画にはのめり込むきっかけになった監督なので、自分のルーツと向き合うような、とても楽しい仕事でした。
WWD:逆に、本国ポスターのイメージを継続する場合は、どんな作業を行うのでしょうか?
大島:日本語表記に変えた時にタイポグラフィーやレイアウトをどうするかを考えたり、時には全体の色味を微調整したりします。例えばマイクミルズ監督の「カモン カモン」(2019年)は、ほとんどイメージを変えていません。
WWD:「カモン カモン」はパンフレットも素敵でした。
大島:ありがとうございます。ミルズ監督はグラフィックデザイナーやイラストレーターとしても著名で、以前からデザイナーとしても尊敬しており、せっかくなのでパンフレットに載せるイラストも描いていただきました。デザイン出しで一度だけフィードバックをもらい、それが的確なサジェスチョンだったことに感動しました。彼は基本に忠実で、その中から作家性が滲み出る方です。デザインのみならず、映画制作にも通じる揺るぎない姿勢なのだなと。僕の提案は力が入りすぎていて、「その方向も良いけれど、ちょっとこうしてみては?」とシンプルで的を射た意見をくれました。気が引き締まる、とてもいい経験でした。
映画の可能性を広げる
“オルタナティブポスター”
WWD:本国ポスターのイメージを受け継ぐ場合、他に挑戦したいアイデアが生まれたらどうするのですか?