寄稿「5mの橋で地球をまたぐ」 奄美大島宇検村とブラジルの百年 東京在住 池田泰久
次世代に続く新たな交流の幕開け
宇検村には現在、村民出身者の2世を中心に、自らのルーツであるこの地に暮らすケースも見られている。3世の県費留学生がこの島を訪ねてきた際には、村で温かい交流会が開かれたという。 2018年11月には、宇検村出身者の2世や3世の訪問団が村を訪れ、歓迎会が盛大に開かれた。会場では、村民との間で、久しぶりの再会に抱き合って喜ぶ場面や新たな交流を喜ぶ声が多く聞かれたという。その際、伯国橋の上では一行の記念撮影も行われた。 教育委員会としても、この節目を記念して、宇検村からのブラジル移民の歴史とその足跡をたどる企画展を生涯学習センターで開催した。2019年には、横浜市のJICA横浜でも企画展「ブラジルと奄美・宇検村」や講座を開き、多くの来場者が宇検村とブラジルの絆に触れる機会となった。 「皆さんの先人たちがブラジルを目指したその決断は、宇検村の素晴らしい歴史だと認識している。次の世代へ語り継ぎ、交流を深めていきたい」。2018年10月号の広報「うけん」には、宇検村長がブラジル現地での交流会の際にそのように挨拶したと記されている。 宇検村からの移住の歴史は、決して望まれた形で始まったものではなかったかもしれない。しかし、その歴史は100年の時を経て、世代を超えて地球を跨ぐ深い絆を築き上げた。その象徴とも言える伯国橋はわずか5メートルにも満たない小さな橋であるが、静かに集落の中心地に佇むその姿は、遠く離れた二つの奄美――宇検村とブラジルを繋ぐ心の距離を示しているように思えてならなかった。 今後ますます交流が育まれ、その絆が次の世代へと確実に引き継がれていくことを願ってやまない。