農林中金の巨額損失、金利高止まり長期化への警告を世界に発信
農林水産省の担当者は19日、農林中金の経営状況については引き続き金融庁とともにしっかりモニタリングしていくと述べた。農林中金の広報担当者は同日、含み損はすでに自己資本比率には反映されており、損失処理をしても自己資本の健全性には影響しないと電子メールで述べた。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の伴英康氏は、農林中金の例は運用資産が多様化する中、全社がそれに見合ったリスク管理能力を「完璧に備えている訳ではない」ことを露呈したと分析。「他の資産でカバーし切れなくなった金融機関はそれほど多くはない」としながらも、全ての企業が「改めてリスク管理体制を強化し、分散投資を考えていかなければならない」と指摘する。
農林中金が他の資産への入れ替えができたとしても、外貨調達コストの問題は残る。CLOや社債を積み増せば、信用リスクを負うことになる。3月末時点の株式の投資比率はわずか2.3%。国際的な資本規制「バーゼル3」の下、リスクが高く、他の資産よりも多くの自己資本を必要とする株式を積み増す余地は少ない。
農林中金が最終赤字となるのは、米リーマン・ショックの影響を受けて5721億円の損失を計上した09年3月期以来となる。金融市場の混乱で保有する証券化商品や株式の減損処理を迫られ、1兆9000億円の増資を行った。当時の理事長は責任を取って辞任した。
再び難しい局面を迎えた中、現在の理事長である奥和登氏に改革が委ねられている。5000億円超の赤字を見込むと説明した5月の記者会見で同氏は「責任を取って辞めるというのも一つの選択肢である一方、ちゃんと職務を遂行するという責任がある。私としては後者を選択したい」として、続投する意思を示した。
原題:Norinchukin Sends Warning to World on Higher-for-Longer Rates(抜粋)
関連記事:
--取材協力:佐野七緒、Russell Ward、Finbarr Flynn.
(c)2024 Bloomberg L.P.
Taiga Uranaka, Mia Glass, Takashi Nakamichi