サッカー日本代表の悪い流れを変えていった久保建英 中国に「カオス」を与え攻撃の起点に
【「相手を恐れさせるアタッカー」】 アランブルはラ・レアルの下部組織スビエタで育ち、トップではクレバーで質実剛健なボランチとして活躍。2002-03シーズンにシャビ・アロンソと組んだ中盤は「歴代最強」と言われ、ラ・リーガで準優勝。翌2003-04シーズンには、チャンピオンズリーグでベスト16の結果も叩き出した。2012年に引退するまで、ラ・レアルひと筋を貫いたワンクラブマンだ。 「タケは完璧性の高い選手で、スペースを占拠し、突破し、仕上げまでする。フィニッシュするプレーができることは一番大きいが、クロスもうまいし、とにかく攻撃のバリエーションが多い。相手と対峙し、勝負するという単純に対人での能力が高いのさ。だからこそ、たとえ相手が門を閉ざすように守ってきても、それを打ち壊すことができる」 事実、ラ・レアルでも中心選手としてバルセロナを撃破したばかりだ。 「タケは右サイドが主戦場で、適正ポジションだと思う。ただ、左でも、トップでも、トップ下でもいける。彼自身はポジションに囚われていない。特に攻撃ではひとり際立つ。相手を恐れさせるアタッカーだ。相手ゴールから遠いところからでもアクセルを踏みながら、猛烈な勢いで敵陣に迫っていける」 "完璧性"の真骨頂が出たのが、前半38分だった。久保は伊東へのパスがカットされると、正面にこぼれてきたボールを回収。一気に中央へ切り込み、左足で巻くようなシュートを放つが、これは敵GKにセービングされている。 しかし、攻撃はこれで終わらない。左からのCK、久保は低い弾道のアウトスイングで小川航基に合わせる。これを小川が頭で叩き込み、見事に先制。久保の仕掛けからのCKでゴールをこじ開けた。 前半終了間際にも、久保は田中からのパスを受けると、伊東へパス。そのクロスがカットされて右CKに。これが板倉滉の2得点目につながった。 久保はことごとく攻撃の起点になっていた。 後半立ち上がりには1点を返されるが、9分には再び、久保が妙味を見せる。伊東から戻されたボールを、仕掛ける姿勢を見せて相手ふたりを引きつけて伊東へ。そのクロスを小川がネットに叩き込んだ。
「相手が久保を怖がって混乱する」 今シーズン、ラ・リーガで言われることだが、久保が相手にカオスを与えているのだろう。 久保は森保ジャパンでも戦術を超えた選手になりつつある。監督の計算以上の仕事ができている。少々、システム上の欠陥があっても、それを凌駕できる「個人」だ。アジアの選手では歯が立たないだろう。 次に久保が見据えるのは、アスレティック・ビルバオとのバスクダービーになる。ひと筋縄にいかない相手だが、こうした激闘が彼をさらに逞しくする。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki