難関国立大で文武両道に励む。“傷だらけの守護神”小林航大は、プロサッカー選手と教師になることを目標に邁進中
「僕も大卒プロを本気で目ざしています」
この2試合で自分の甘さこそ痛感したが、この厳しさこそ小林が求めてきたものだった。 「選手権でベスト8まで行けて、もう全てを出し尽くして、準々決勝の後は身体に力が入らないほどだったので、ミックスゾーンではそう(サッカーを続けないかもしれない)口にしたのですが、サッカーで燃え尽きたわけではありませんでした。 共通テストに向けて勉強するなかで『やっぱり大学4年間でサッカーも勉強も全力でやりたい。大学でもう一度、全国大会に出場したい』という気持ちが強くなったんです。僕の下に兄弟が2人いるので親の負担も考えて、サッカーも強くて勉強もできる国立大学を探して見つけたのが広島大学でした」 当初は理系学部を希望していたが、前期試験で不合格となり、後期試験に懸けた。共通テストでは理系科目より文系科目の方が、成績が取れていたことから教育学部にターゲットを絞ったうえで挑んだ。 「正直、浪人覚悟でした。みんなが続々と私立や前期試験で合格を勝ち取っていくので焦りはありましたが、最後まで受かることを信じていました」 そしてギリギリの今年3月に合格を掴み取り、広島大での文武両道をスタートさせたのだった。 「本当にここに来て良かったと思っています。高校時代、最後の最後まで諦めないでプロの道を勝ち取った原康介(北海道コンサドーレ札幌)にものすごく刺激を得たし、広大でも周りに本気でプロを目ざしている選手たちがたくさんいるので、僕も大卒プロを本気で目ざしています。プロサッカー選手と教師になることを目標にやれているからこそ、この悔しさも絶対にこれからに繋げていきたいと思っています」 本気で取り組むからこそ価値を生む。その価値が自信となって、人間的にも成長する。選手権を盛り上げた『傷だらけの守護神』は、まさにその階段を着実に登っている。 取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)