小学生の98.1%が公立小、第3の学校「オルタナティブスクール」増える背景と実態 カリキュラムの自由度や学びのスタイルも多様
スクールの理念に共感できるかが大事
一方、オルタナティブスクールを選ぶ保護者も、既存の学力観に疑問を持ち、子どもの個性を最大限に伸ばしたいと願っている人が多いと小針氏。 どんな子が合っているかという質問には、「一人ひとりに合わせていくので、不向きな子どもはあまりいないが、最も大切なのは、保護者が理念に共感できるかどうかだ」と言います。オルタナティブスクールでは、保護者も子どもを預けるという意識ではなく、スクールとタッグを組み、共にあゆむ姿勢がより重要になるのです。 卒業後の進路については、28年の歴史がある炭谷氏から、例えば探究の時間にひたすら穴を掘っていた子どもは外資系のコンサルタントに、「忘れ物キング」が世界レベルの「スーパーエンジニア」に、不登校だった少年が22歳で牧場の経営者になるなど、進路は多様。また世界を旅する学校、インフィニティ国際学院では、国内外の大学に進学していくケースが多いということでした。皆それぞれ自分の好きなことやりたいことを見つけているようです。 今回のフェスの参加者150名の属性は 教育実践者・教育関係者 と保護者が半々。教育業界以外の社会人や学生の参加もありました。 筆者が話をした保護者の1人は、広島在住の幼稚園児を持つ母親で、子どもが幼稚園になじめず、公立小学校への進学に不安があるが、近隣にはほかに選択肢がなく、よいスクールがあれば移住も考えたいと話していました。 子どもが育つ環境について真剣に模索する親にとって、オルタナティブスクールは前向きな選択肢の一つとなるのでしょう。
地方ほど選択肢は少ない、協力して第3の選択肢を増やす
しかし、地方に行けば行くほど、公立以外の選択肢はないのが実情です。 今回参加しいていた一般社団法人うみかぜ SOTOBOコミュニティスクールのレイブン澄さんも、千葉県一宮町在住で、自分の子どもに探究教育を体験させたいと思ったが、通えるところには多様な学びを提供するスクールがないので、思いを同じくする仲間と立ち上げたそうで、現在は週1回活動しています。このように、自分たちで立ち上げたいと考える人たちにとっても参考になるイベントでした。 今回、フェスに参加したのは東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡、北九州の11スクール。 立ち上げの経緯も、年数も、背景も、理念もさまざまですが、印象的だったのは、フラットに協力し合って、子どもたちの学びの選択肢を増やしていこうという意識が強いことです。 「立ち上げたときには、モデルもないし、手探りでつくるしかなかった」という炭谷氏。 28年経って全国に仲間ができて嬉しいと語ります。そして、小針氏の発案で「オルタナティブスクールを身近な選択肢にすること」を使命にした一般財団法人オルタナティブスクール・ジャパン(ASJ)が設立され炭谷氏も理事としてジョインしました。 ASJは、ロールモデルとなるオルタナティブスクールが47都道府県に開校することを目指し、使命をまっとうして、財団が解散することをゴールに、活動を開始しています。今後は、スクールの開校サポートと経営支援、オルタナティブスクール同士がつながって学習や探究のプログラム作りなどを行っていきます。 10年ほど前に視察したオランダは、憲法で教育の3つの自由が保障されていました。 設立の自由 理念の自由 教育方法の自由 です。視察に訪れた中にも、既存の学校に適応できない子どものために保護者が中心となって運営している学校がありました。国としてのゴールが定められており、基準を満たせば方法は自由。専門家のサポートもつきます。その結果、子どもの幸福度世界一の国になっているのです。多様な宗教や民族を受け入れている国ならではだと思いましたが、今後日本も多様性を尊重していかなければ国の存続すら危ういでしょう。 教育は国の未来をつくる仕事です。今の子どもたちが働き盛りになる2050年の世界を見据えて、日本が幸せな国として発展していくことを願いたいと思います。 子どもたちがその子らしく成長していけるように、日本にも学びの選択肢を増やしていきたい、地元にも多様な学びの機会を作りたいと考える人はASJに問い合わせてみてはいかがでしょうか。 今回のフェスに参加したスクールと団体は以下の通り。詳細は直接お問い合わせください。 インフィニティ国際学院 中等部・高等部 CAN!P school 湘南ホクレア学園 一般社団法人うみかぜ SOTOBOコミュニティスクール 逗子オルタナティブスクールFRASCO 東京コミュニティスクール ヒミツキチ森学園 HILLOCK初等部 箕面こどもの森学園(認定NPO法人コクレオの森) モンテッソーリ・エレメンタリースクール北九州 ラーンネット・グローバルスクール 探究コネクト 一般財団法人オルタナティブスクール・ジャパン (注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子・東洋経済education × ICT編集部