世界から取り残された日本企業、一体どう変わればいいのか
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
無形資産投資へと転換すべき理由
ブランド力を磨き、企業価値を高めるには、将来の競争優位性や差別化の維持に効果のある知的財産を十二分に活用する必要がある。 それには、顧客ネットワークや研究開発による自社創造性のレベルアップ、外部からのノウハウの取り込みなどへの投資を積極的に行うことだ。 「ものづくり」を得意とする日本企業の多くはこれまでハード技術を向上させるための有形資産投資に積極姿勢を示してきたが、無形資産投資へと転換すべきときである。 「有形資産」「無形資産」と聞いてもピンとこないという人も多いかもしれないが、有形資産とは機械設備や工場などの構築物といった実物的な生産設備のことである。 これに対して、無形資産(知的資産)はブランド、人材や技術・ノウハウ、研究開発など目に見えない資産を指す。特許権、商標権、意匠権、著作権といった知的財産権だけでなく、データ、顧客ネットワーク、信頼力、サプライチェーンなども含まれる。 さらに広くとらえるならば、これらを生み出す組織力やプロセスなども対象となる。こうした各企業の固有の無形資産を有効に組み合わせることで収益につなげる経営モデルを「知的資産経営」と呼ぶ。 「中小企業白書・小規模企業白書」(2022年版)の概要によれば、無形資産投資のほうが全要素生産性(資本投入や労働投入では説明できない経済成長を生み出す要素)の上昇率が大きい。有形資産投資と比べて生産性向上に大きく寄与しているということだ。イノベーションをもたらすなどの経済的特性も指摘されており、付加価値の向上を促す手段の一つとしても注目を集めている。 日本企業と欧米企業の利益率の開きについては先に簡単に触れたが、もう少し詳述するならば、米国は1990年代において無形資産投資が有形資産投資を逆転して企業価値を高めてきたのに対し、日本は2000年代以降も有形資産投資のほうが上回り、いまだ重視する傾向は変わらない。 有形資産投資は、「ものづくり日本」にとってポピュラーな投資方法であるためだ。機械を高度化させて製品の完成度を向上させることに心血を注いできた日本は、先進諸国の中でも革新的資産投資の割合が非常に高い国とされる。