地震襲った能登地方に記録的豪雨、沖合の高い海面水温が極端雨量の要因に 「複合災害」へ備えを
公的防災・減災力の強化が最重要課題
地震学、気象学や防災の専門家が指摘するように、今後も「いつどこで起きても不思議ではない」地震に加えて猛暑や豪雨のリスクは高まる一方のようだ。
自然災害は地方だけでなく都市部も襲う。8月21日には東京都心をゲリラ豪雨が襲い、下水道の排水能力を大幅に上回る局地的な短時間豪雨が発生し、谷地形のところに雨水が集中して内水氾濫という都市型水害を起こしている。
最新鋭のスーパーコンピューターを駆使した現在の気象予報技術でも、残念ながら今回のように空前の豪雨の事前、直前予測は容易でない。それでも被害を少しでも抑える事前防災・減災の任務は国や自治体にある。だが、この国の自然災害の猛威は現在の公的防災・減災力を超えつつある。
横浜国立大学客員教授で元気象庁長官の橋田俊彦氏は「(今や)複合災害が(防災上の)キーワードだ。学術界が今後も起こり得る複合災害にどう立ち向かうかが重要だ」と指摘し、社会全体で取り組むべき最重要課題に対して防災に関連する科学が連携し、この国の防災・減災力の強化につなげることの重要性を強調した。 また、進行役をした防災学術連携体代表幹事で東京工業大学特任教授の米田雅子氏は「海の温度はなかなか下がらないことがよく分かった」と述べ、今後も海洋熱波が影響する豪雨などの自然災害が頻発することを懸念した。
複合災害を「自分事」ととらえよう
今回の「能登豪雨」は、マグニチュード(M)7.6の大地震からわずか9カ月足らずで再び多くの集落が孤立し、同じ地域で犠牲者を出してしまった。
そして地震大国、自然災害大国に住む私たちに「二重被災」のリスクが現実になる残酷さを見せつけた。異なる災害が同じ地域で相次ぐ複合災害に苦しむ被災地の人々の姿は「災害大国日本」の厳しい現実を突きつけた。
今、国や自治体、関係機関による緊急の被災地支援に全力を尽くすことが何より急がれる。また、中村氏は「異常な暑さによる熱中症や台風や大雨に伴う災害は『自分事』と考える必要がある」と語る。まさに、私たち自身も複合災害を「自分事」ととらえ、自ら命を守る事前の備えと災害時の行動想定が求められる。
内城喜貴/科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員