地震襲った能登地方に記録的豪雨、沖合の高い海面水温が極端雨量の要因に 「複合災害」へ備えを
日本周辺海域の温暖化による豪雨や台風の影響について中村氏は、温暖化以前は北上した梅雨前線に向けて熱帯から吹き込む気流を日本近海が冷やして安定化し、積乱雲が発達しにくかった。しかし温暖化が進むと、この気流は近海からの熱や水蒸気の補給により不安定な状態が続いて積乱雲が発達しやすくなると解説した。
中村氏によると、海面水温が記録的に高くなる海洋熱波が台風に影響した例が台風10号だった。10号は西日本南方の海洋熱波の影響で8月26日に急発達し、その後鹿児島県上陸直前まで最大勢力を維持し、黒潮海域から秋雨前線に向かう暖かく湿った気流が広範囲に大雨をもたらした。台風7号は黒潮海域の高い海面水温の影響で同16日に関東に最接近した時でも強い勢力を維持したという。
最近10年の大雨発生回数は過去の1.5倍に
今回の能登豪雨により、20以上の河川が相次いで氾濫し、被害を大きくした。土木工学が専門で、国土交通省技監の経験もある池内幸司・東京大学名誉教授は「今回、線状降水帯がすっぽり(能登地方を)覆うような形になり、多くの中小河川が氾濫した。記録的豪雨が河川の流下能力をあっという間に超えた」と指摘した。 以前から能登半島の河川は長さが比較的短く、山間を流れることから上流で降った雨が一気に下流に流れて水位が急に上昇する恐れがあることが指摘されていた。輪島市や珠洲市、能登町を流れる河川も氾濫して大地震後に設営された仮設住宅が浸水した。まさに複合災害だった。
池内氏によると、2023年までの最近の10年間の「時間雨量50ミリ以上」の大雨の平均年間発生回数は約1300地点あたり約330回で、統計開始初期の1976~1985年の10年間の同226回と比べて約1.5倍に増加したという。 また中村氏によると、1日の降水量が300ミリ以上の大雨の最近10年の年間発生回数は1980年代より2倍以上増加し、その要因はやはり温暖化による気温上昇や日本近海の海面水温の長期的な上昇傾向に伴う大気中の水蒸気量の長期的増加にあるという。