地震襲った能登地方に記録的豪雨、沖合の高い海面水温が極端雨量の要因に 「複合災害」へ備えを
池内氏は「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」のシナリオを引用し、今世紀末まで世界の気温が2度上昇した場合、世界の洪水発生頻度は約2倍に増えると予測。国土交通省の検討会の資料を基に日本国内でも気温上昇が降雨量を増やすとの予測も紹介した。
高温傾向や豪雨増は今後も続く
昨年から続く猛暑や豪雨被害の要因や対策を検討し合う23日の速報会は、能登半島を豪雨が襲う前に企画された。そうした目的や経緯もあり、記録的な高温や豪雨をもたらす異常気象、気候変動・気候変化についての詳しい分析や報告が続いた。
中村氏は「地球温暖化に伴う長期的な気温の上昇傾向や日本周辺の海面水温の高さが続いており、中緯度地域全体が暖まっている。この傾向は簡単には終わらない。来年も気温や湿度が高くなる確率はかなり高い」と述べた。
また、黒潮の流れの変化も最近の気象に大きく影響しているとし、「これが温暖化の影響なのかどうかを今後詳しく評価する必要があるが、海流の変化も重なるとこれまでにないような海洋熱波の状況は今後も観測されやすくなるだろう。海流の変化も簡単には元には戻らない」と指摘した。
土木工学に基づく防災が専門の池内氏は気候変動を踏まえた水災害対策の見直しが必要と強調している。具体的には、河川や下水道、砂防、海岸などの管理者が主体のこれまでの治水対策に加えて河川区域だけでなく氾濫域も含めて一つの流域として捉える「流域治水」の重要性を説いた。
熱中症、「超災害級」でも防げる
この日の報告会には、熱中症の治療や対策などが専門の日本医科大学の横堀将司教授も参加。熱中症による死者が近年顕著に増加していることから「今や災害級を超えて超災害級の状況だ」とした上で「これは防げる災害だ」と強調している。 そして今回、能登地方の豪雨被害により再び避難生活を余儀なくされている人々に対して「避難生活による疲労や体調不良、栄養不足は熱中症のリスクを高くする」と注意を呼びかけた。災害支援の人々にとっても高温、多湿の過酷な環境は危険だという。