リーディング音楽劇『ジャングル大帝』ルネ＆ルッキオ編　が開幕　写真：福羅広幸

　少年忍者の深田竜生、黒田光輝が主演するリーディング音楽劇『ジャングル大帝』ルネ＆ルッキオ編が10日、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて初日を迎えた。今作はいわずとしれた手塚治虫の名作をリーディング音楽劇として上演。人の心を持ったジャングルの王・レオとその妃ライヤとの子として生まれた双子のルネとルッキオを深田と黒田が演じる。 【誌面カット】仲良く寄り添う黒田光輝＆深田竜生 　円形ステージをぐるりと囲むように配置されたオーケストラ。順番にステージに現れたキャストたちはストレッチしたり、笑顔であいさつを交わしたり。和やかなムードのなか、気づけばオウムのココが、ステージ中央で「レオ編」で起こった物語を歌と語りで伝え始め、舞台の幕が上がった。 　白い百獣の王・レオと妃のライヤに生まれた双子の子ども、男の子のルネを演じる深田、女の子のルッキオを演じる黒田の最初の一声は、赤ちゃんライオンの鳴き声。無垢で好奇心旺盛なルネを演じる深田に対して、肩を小さくすぼめて話しかける黒田のルッキオが、小さな女の子に思える。 　一人で二役以上演じるのが朗読劇。この舞台も例外ではなく、人間の世界へ飛び出したルネがサーカス団で出会う男の子・ピートを黒田が演じている。レオがケン一と友情を育んだように、ルネとピートもお互い励まし合い、友情が芽生えてくる様子も見るほどに気になってくる。一方の深田は、ケン一の幼なじみで地質学者のピエール役も。ここでは声色を変え、ムダにカッコいい（!?）ポーズで決めるキャラクターで笑いを誘った。 　他にも2組の友情が描かれている。月光石を巡って険悪な仲になっていたプラス教授（宮原浩暢）とマイナス博士（工藤広夢）、お互いに子を持つ父となって再会したレオ（上口耕平）とケン一（永田崇人）。月光石を求めてムーン山への探検をする道中に描かれるどちらの友情も「美しい」という言葉だけでは収まらない、本当の意味での命懸けの友情をリーディングすることで、観る者の涙を誘う。友情だけでなく、水嶋凜演じるメリーの女性の強さ、ダンドイ舞莉花が演じるライヤの母性にも胸を打たれる。 　はずむようにうれしい気持ち、猛吹雪の脅威、生きていく勇気…など、さまざまな感情がオーケストラの生演奏とコーラスでさらに深みを増していく。さらにダンサーによる見事な動きも相まって、まるで本を読んだときに誰もが感じる自分の頭の中だけに広がる絵を目の前で見ているように、物語の世界が立体的に広がっていく。 　手塚治虫が伝えたかった命の尊さが存分にリーディング音楽劇としていきいきと描かれている。