茨城発の音楽番組に世界から毎週400通のリクエスト 「ナウヤン同盟」ラジオリスナーの固い絆で人気沸騰…石井哲也さんに聞く
ローカル放送の枠を超え、首都圏を中心に全国のアラフィフ、アラフォーから人気を誇るLuckyFM茨城放送の音楽番組「Mucic Pick Up 80’s&90’s」(毎週火曜日22時~24時)。パーソナリティーを務めるのは元NHKのフリーアナウンサー・石井哲也さん(55)だ。大みそかも22時から2時間、生放送を行う。番組への熱き思いと、来たるべき2025年への新たなチャレンジについて聞いた。(取材・構成=加藤弘士) * * * 火曜日の夜を待ちわびて、1週間を必死に頑張るリスナーたちがいる。「ナウでヤングな青春時代にプレイバックします!」。そんな石井さんの優しい声とともに番組はスタートする。2時間の番組に寄せられるリクエストは毎週400通以上。その全てに目を通して、選曲する。 「生放送が終わると、翌日から次の放送回のラインナップを決めていくんです。リクエストが来るごとに、だんだん研ぎ澄まされていって、月曜日にバシッと決めていく感じです」 番組の最後には、メールが採用されなかったリスナーの「ナウヤンネーム」(ラジオネーム)を読み上げる。「愛の点呼」と呼ばれるひとときだ。 「元々、『ナウでヤングな青春時代にプレイバック』と言っていて、それからリスナーの総称が『ナウヤン同盟』っていう名称になったんです。最近では番組の一体感が学校みたいだねって感じになって、『ナウヤン学園』となって。その時、私もすぐに『あ~あ~ナウヤン』とPL学園の校歌を替え歌で歌ったり(笑)。『愛の点呼』も、最初はナウヤンネームを呼んだだけだったんですが、そこに『愛がこもってますね』って言われたので、『愛の点呼』のコーナーになったり。聴いてくださる皆さんのポストで、一緒に作り上げていく番組なんです」 2時間は生き物。リスナーの反応で絶えず変化していく。どういう流れになってくるか、誰にも予測がつかない。 「選曲は決まっているんですけど、リアルタイムの予期せぬ反応が楽しみになっています。オンエア中は台本を見ながら、右手にパソコンがあって、『#mp8090』のXのポストをずっと見ていくんです。今はラジコもあるし、音声も昔よりはクリアに聞こえます。そうすると私のマウスの音まで入るんで、『石井さんのマウスの音がエモい』とか声が挙がったり(笑)」 ローカル局の番組でありながら、オンエア中に「#mp8090」だけでなく、「石井さん」がXで「トレンド入り」することもある。 「普通に入ります(笑)。ナウヤン同盟の皆さんが番組中、『トレンド入りしてるよ』っていうのを知らせてくれるんです」 石井さんの温かさがリスナーに届き、「同盟」の絆は強固になっていく。 「リクエストやポストを送ってくれる方は、本当にこの火曜日を楽しみにして、1週間を過ごしてくださっているんです。火曜日が軸になっていて、一緒に楽しみましょうという2時間になっていると思います」 石井さんは元々NHKのアナウンサー。そのまま在籍すれば安定の50代だったはずだ。なぜNHKを去り、フリーになったのか。 「2015年から2018年まで、NHKの水戸放送局に勤務したことがきっかけです。茨城県には民放のテレビ局がなくて、放送局はNHKとLuckyFMのみ。必然的にLuckyFMの方と仲良くなって話をする中で、水戸出身のアナウンサーってあまりいないねって。やっぱり方言がありますから(笑)。あと母校の水戸一高関連の方々とお会いする機会が増えていって、水戸への愛着が強くなっていったんです。ふるさとに貢献したいという思いが強くなり、50歳になって、自分に何がこれからできるのかなと思ったら『地域貢献』だったんですね」 大きな決断だった。LuckyFMへと活躍の舞台を移した。 「LuckyFMに2020年のコロナ禍の時に移って、アナウンサーとして復活しました。その時に始まった『Mucic Pick Up 80’s&90’s』がLuckyFMナンバー1の人気になって。アナウンサーとして番組を持って、茨城から発信できるということが最大の地域貢献かなと考えるようになったんです。それならフリーになって、さらにアナウンサーとして軸を置いて活動を広げるために、東京を拠点に活動をしようと」 ラジコの普及に伴い、地方局が制作したコンテンツも広く全国のリスナーが楽しめるボーダーレスな時代が到来した。茨城の放送局が制作する「ナウヤン」のリスナーは、ワールドワイドに広がっている。 「北海道から沖縄までリスナーさんがいるんです、さらに最近はインドのデリー、フランスのパリから聴いて下さる人もいます。米本土や台湾のリスナーさんも、たまにリクエストのメールをくれたりするんです。本当にうれしですよね」 そんな石井さんはこのほど、(株)FCEのアンバサダーとして社会貢献を目指し、2025年から研修の講師にチャレンジすることになった。同社が出版する「7つの習慣」を受講者にコーチングしていくという仕事だ。 「日本人にとって、これからの社会の中では主体性が大切になっていくと思ったからです。主体性というのは、自分が言ったことをやり遂げて、責任を取るということ。闇雲にただただ頑張るということじゃなくて、しっかり考えて自分で選択をして、最終的にやり遂げて、選択をしたことを正解にするというところの大切さを伝えていきたいですね」 そして、こう続けた。 「木に例えると、根っこの部分っていうのは人には見えない。いかに自分が個性を打ち出してみても、土台がしっかりしていないといけないんです。人はどうしてもよく見せようとか、悪い姿を見せたくないなと思ったりするんですけど、大切なのは根っこの部分という点に共感したんです。反射的に発言したり、行動したりするのではなく、一旦考えて、自分で納得して選択をしていけば、もっと成熟した社会になっていくと思います。アナウンサーで培った伝える力を改めて発揮して、『研修を受けてよかったな』と感じてもらえるような講座にしていきたいです」 もちろん、本籍地は「ナウヤン」のスタジオだ。これから番組はどのように進化していくのだろうか。 「始まって5年目に突入したんです。リスナーの皆さんからは元気の源になっているという声をたくさんいただいています。そういった気持ちに応えていきたい。リスナーさんから言われているのは『500回、1000回を目指してください』と。今、55歳なんですけど、還暦目指してまずは、やっていきます。番組を癒しにしてもらって、生きていく上でのパワーに変えてもらいたいと思っています」
報知新聞社