Infinidat、日本でのエンタープライズストレージシェア拡大に意欲
Infinidat Japan合同会社は29日、日本での事業戦略発表会を開催した。 【画像】Infinidat is a Leading Tier-1 Storage Solution Provider Infinidatはイスラエルにて2011年に設立されたストレージベンダーで、大規模ユーザー向けストレージ製品を提供している。日本法人は2016年に設立しているが、カントリーマネージャーの山田秀樹氏は、「AIによるデータ急増、すべてクラウドを利用するのではなくオンプレ活用も必要になったと判断するお客さまが出てきたことなど、ストレージを巡る日本のお客さまの状況は転換期を迎え、従来のストレージでは追いつかなくなってきている。そういう日本のお客さまに、今こそInfinidatだとアピールしたい」と述べ、日本でのエンドユーザー向けアピールを強化していく意向を示した。 Infinidatは、大規模エンタープライズ向けストレージを提供しており、最新製品「InfiniBox G4」など、高いパフォーマンスと最短のレイテンシーを実現しているベンダーだ。本社のCMOであるエリック・ヘルツォーク氏は、自社のシステムのメリットを次のように説明する。 「私は以前IBMに在籍し、その後EMCでもストレージビジネスに関わってきた。さまざまなエンタープライズストレージ技術を見てきたが、Infinidatのみが、単一OSですべてのストレージ製品をマネージするシステムとなっている。私たちのバリュープロポジションは、単なる技術的な側面だけでなく、ビジネスにとってメリットの大きなシステムとなっている。我々のテクノロジーソリューションを使うことで、お客さまは最速で投資を回収することができる」。 最大の特徴となっているのが、独自開発したソフトウェアだ。独自OS「InfuzeOS」を中心に、高いデータ保管性能を実現する「InfiniBox SSA」によって、TCO削減とROIの最適化、高いパフォーマンス、サービス指向の自動化を実現している。 また高性能な大容量ストレージシステム「InfiniBox」は、独自開発したアーキテクチャによって高性能、高信頼性、大容量を実現し、ユーザーが抱えるストレージシステムの課題を解決する。 「InfiniGuard」は、ネットワークの脅威を検出・防御するもので、侵入検知、侵入防止システム機能を持ち、ネットワークトラフィックをリアルタイムで監視し、異常な活動を検出して、サイバー攻撃への対処を可能にするという。 ヘルツォークCMOは、「お客さまが最速で投資回収ができる要因のひとつは、我々のストレージソリューションが、サービス指向でデジタル化されている点にある。あるお客さまは、3年間、我々のInfiniBoxを使ったところ、一度インストールしてセットした後、一切システムを触ることなく運用できたと話している。別なお客さまでは、15人いたストレージアドミニストレーターを4人に減らすことができたという。その要因となっているのも、当社製品がサービス指向で開発されたものであり、自動化技術などが駆使されていることにある」と、同社の強みを説明した。 新モデル「InfiniBox SSA G4-F1400T」は、エッジや分散データセンターなどでの利用を想定した製品で、工場に設置し、エッジソリューションとして利用しているユーザー事例も出ているという。 「InfiniVerse Mobius」は、InfiniBox G4とInfiniBox SSA G4のコントローラーアップグレードオプション。InfiniBoxがアップグレードされた際、コントローラーをアップグレードするだけで、マイグレーションやデータ移行を不要とする。 「他社からも同じようなソリューションが提供されているが、彼らのソリューションはミッドレンジのユースケース。我々はハイエンド・エンタープライズ向けのストレージソリューション。さらに、このコントローラーベースのアップグレードは、お客さま自身がオプションとして選んでいただくもので、必須ではない」(ヘルツォークCMO)。 また昨年、InfuzeOSがAmazon Web Services(AWS)に対応し、ハイブリッド・マルチクラウドストレージシステムとなったのに続き、2024年は新たにMicrosoft Azureに対応。管理、データサービス、サイバーレジリエンスなどの機能を、オンプレミス同様にAzureで利用することができる。 「エンタープライズのお客さまは、オンプレ、パブリッククラウド間のシームレスな連携を利用できるようになる。平時のみならず、自然災害のようなトラブルが起こった際のバックアップとしてクラウドにデータを置いておくことも可能となる」(ヘルツォークCMO)。 このほか、サイバープロテクション機能であるInfiniSafeについて、「外部の評価機関からの評価が高い」ことをあらためてアピールし、「InfiniSafeは、ここ数年、最も他社との差別化となっている機能。マルウェア、ランサムウェア対策などのサイバー攻撃への対応が充実していることが、当社製品の大きな差別化策となっている」と述べた。 ■ 「日本のユーザーの変化に合致している」 また、Infinidat本社のCEOであるフィル・ブリンガー氏は、日本市場について、「ストレージ分野では、日本は厳しい市場であると理解している。しかし、当社が顧客を増やすよいタイミングであるとも考えている」と話す。 エンタープライズストレージは、外資系ベンダーの製品に加え、日本では日立、富士通といった大手企業が製品を提供している。グローバルの競合ベンダーに加え、日本ベンダーとの競争があることが、「日本のストレージ市場は厳しい」とブリンガーCEOが指摘したゆえんである。 「長年、日本のストレージベンダーが優位だったということは、日本のエンタープライズユーザーが最先端技術よりも、安心して利用できる環境を優先してきたということだろう。しかし、その状況は変わりつつあると考えている」とブリンガーCEOは指摘する。 この指摘を受け、日本のカントリーマネージャーである山田氏は、「実は日本最大のユーザーは、具体的な名称は明らかにできないものの大手銀行。日本企業はコンサバティブで、新しい技術よりも枯れた実績ある技術を優先すると言われているが、大手金融機関が採用してくれるようになったことで、変化が起こっていることを実感した」と明らかにした。 山田カントリーマネージャーは、「Infinidatは競合に比べ露出が少ないのでは?という指摘を受けたこともあるが、ユーザーの選択肢に変化が起こっている今こそ、Infinidatをアピールするタイミングが来た」とし、変化を市場拡大のチャンスだと受け止めていることを強調する。 またInfinidatは、2011年に設立された、ストレージベンダーとしては新しい企業であるものの、CEOのブリンガー氏、CMOのヘルツォーク氏はほかのストレージベンダーで40年働いてきた人物で、新しい技術をストレージ業界のベテランが舵取りをしている企業ということになる。 「長い間、ストレージ業界で仕事をしてきたが、ストレージ業界も大きく変化していることは理解している。技術面もそうだが、ユーザー側のコストに対する感覚も大きく変化している。例えば、オンプレミス版を利用するユーザーはCAPEX(一時支払い)、クラウドを利用するユーザーはOPEX(継続支払い)を考えるので、当社は両方に対応している。また経営についても、私は2021年にInfinidatに入社し、新しい経営チームで経営を行っているが、タイトでシビアな経営を行っている。エンタープライズストレージも従来に比べコスト面を気にするユーザーが増えているから、それに対応した企業でいる必要があるからだ」(ブリンガーCEO)。 本社でこうした対応を行いながら、日本市場では今回の記者会見のように取材など露出を増やし、認知度向上を目指す。 山田カントリーマネージャーは、「本社からは引き続き日本市場への投資を増やしていくという力強いコミットをもらっている。日本のユーザーからは、日本の事例を見てから導入を考えたいという声も多いので、事例を増やしながらさらに多くのユーザー獲得を実現したい」と話している。
クラウド Watch,三浦 優子