温泉旅館が25年間でほぼ半減「泊食分離」絶品料理でニッポンの危機を救う!
一方の宮﨑さんは、泊食分離の実験に向け、飲食店に協力を仰いでいた。商店街にある「ジュピターズキッチン」の佐藤大輔さん(39)は、「四万温泉自体を盛り上げていきたい。旅館と連携してやれば面白い」と歓迎する。 店のメインの商品は、群馬が誇る上州牛100%の「ジュピターズバーガー」(1250円)で、開店以来、大人気だ。「オープンして半年ぐらいは夜の営業していた。お客が少なくて採算がとれず、夜の営業はやめてしまった」と佐藤さん。夜の商店街に観光客が増えれば、営業の目途が立つ。
数日後、四万温泉の新たな試み、泊食分離を試す日がやって来た。協力してくれるのは、東京からやって来た常連客で、ハンバーガーがメインの佐藤さんのお店も、この日は洋食のフルコースを考えていた。温泉街の未来をかけた“新たな取り組み”の行方は……。
行政が事業承継に乗り出した!
熊本・水俣市にある「湯の鶴温泉」は、約700年の歴史を持つ温泉街。昔から湯治場として親しまれてきたが、ここでも、珍しい取り組みが行われていた。水俣市行政が主導し、跡継ぎがいない温泉旅館と温泉旅館を経営したい事業者とのマッチングツアーを始めたのだ。 最盛期は旅館や商店が24軒あったが、現在は8軒にまで減ってしまった湯の鶴温泉。マッチングツアーに参加した「永野温泉旅館」は、大正8年に創業し、地元の人たちに愛された湯治場だったが、経営者が高齢になったため、15年前から休業している。 創業者の孫にあたる永野治さん(59)は事業を継げないため、市役所に相談したが、想像以上の老朽化に、ツアーに参加した事業者は手を引いた。
しかし10月上旬。大手不動産会社を退社し、熊本市内で暮らす久保田裕貴さん(28)が、事業者として手を挙げた。「川の流れの音とか、ゆったりした時間を感じられるところがいい」。 旅館は至る所で雨漏りが起きるほどのおんぼろ状態。自慢の温泉も、風呂場は大正時代のままだが、久保田さんは「レトロな雰囲気が、かえって新鮮に映る」と話す。大正時代の建物を生かしつつ、和モダンな雰囲気に作り変えようと考えていた。