停滞していた家電量販店・コジマが奇跡的な大復活! 要因となった“直球勝負の販売戦略”とは?
親会社との補完関係が鮮明に浮かび上がる
販売力・接客力強化でとくに顕著だったのがエアコン。販売員向けに設置工事研修を行わせるほどの徹底ぶりだった。 エアコンは買い替え需要が多いため、住居に設置できるかどうかの判別が難しい。販売員は顧客からの話を聞いて設置が難しそうだと判断した場合、余計なリスクが生じてまで販売することを嫌う。販売を強化しようとすれば、設置工事の知識向上が不可欠なのだ。 2024年も猛烈な暑さが襲い、電気代の高騰も続いている。高機能のものは20万円を超えるものもあるが、その分の付加価値も高い。新築やリフォームによる子育て世帯の買い替えであれば、補助金が出る可能性もある。 正に販売員の提案力が試されるが、その内容次第では高額商品を販売しやすいタイミングでもあるのだ。 コジマのエアコンを含む季節家電の2024年8月期下半期の売上高は、前年同期間比7.3%増の191億円だった。1割近い増収だ。 なお、日本気象協会によると、2024年夏(6-8月)の平均気温は2023年夏と並んで歴代1位タイとなった。つまり、今年は去年と比べて特別暑かったわけではなく、昨年と同等の水準だった。 さらにコジマが強化すると宣言していた通り、テレビと冷蔵庫も下半期は増収だった。これら2つとも上半期は減収だったにもかかわらずだ。そして、ゲームの売上は回復する兆しはなく、低調なまま推移している。 テレビ・白物家電の販売強化戦略は奏功した。 コジマの親会社であるビックカメラは、2024年8月期の売上高が前期比5.8%増の4503億円、営業利益は7.5倍の63億円に跳ね上がった。インバウンド需要を獲得して、大幅な増益となっている。 コジマの大幅な業績改善も寄与し、ビックカメラ連結の営業利益は7割もの増益となっている。 提案力を上げたコジマは日本の消費者への信頼を勝ち取り、都市型のビックカメラは増加の一途を辿る海外観光客の消費の受け皿となっている。 ビックカメラがコジマを買収したのは2012年だ。都市型と郊外型で補完関係が生じるとしていたが、その青写真がいま正にくっきりと浮かび上がったように見える。 取材・文/不破聡
不破聡