大井川鐵道、鈴木肇社長「トーマス号は過去にない挑戦だった」
地方鉄道を取り巻く現状は厳しい。地域の足としての役割を担うだけではもはや経営は成り立たない状況だ。SLを運行し「きかんしゃトーマス号」を走らせるなど「観光鉄道」として再生を図りつつある大井川鐵道。エクリプス日高の完全子会社となり、昨秋、生え抜きの鈴木肇氏が専務取締役から社長に就任した。大井川鐵道の今後や社長就任のいきさつ等について鈴木新社長に話を聞いた。
財務畑一筋「苦労の連続でした」
── プロフィールを拝見すると鈴木社長はもっぱら財務畑を歩んでこられたのですね。 鈴木肇社長 愛知県内の大学を卒業して大井川鐵道に就職しました。就職した時は営業の仕事をするものと思っていたのですが、入社するとすぐに財務の方に配属されまして、それからずっと経理、財務を見てきました。金融機関との折衝も担当してきました。本当に大変で苦労の連続でしたね。 ── 名古屋鉄道が筆頭株主でしたが、2015年に地域経済活性化支援機構に事業再生支援を申請し名鉄が経営から撤退しました。 鈴木社長 名鉄はもともと経営を担うというより、鉄道会社としてのノウハウを伝えるというスタンスで、スポンサーではあったけれど経営支援はしないという姿勢でした。誤解をされている方がいるのですが、大井川鐵道は2011~2013年度の3期は赤字でしたが、それ以前はずっと黒字だったのですよ。ただ、人件費を抑制したり、設備投資を控えたりかなり無理をして黒字化していました。当時、名鉄も傘下の鉄道を整理していましたから、大井川鐵道からの撤退は名鉄側の事情もそれなりに大きかったのです。
子会社化で経営がスピーディーに
── 北海道でホテルを経営するエクリプス日高が支援に乗り出し、昨年6月には100%子会社となりました。エクリプス日高のグループ会社になったことで変わったことはありますか? 鈴木社長 グループ会社といっても北海道のホテルと静岡の天神屋とうちの3社ですので、大きく何かが変わったということはありません。ただ、株式を100%親会社が持つようになったので経営判断の決定が早くなりました。物事をスピーディーに進めることができるようになりました。グループ会社の中では大井川鐵道が広告塔的な役割を担っていると思います。 ── 昨年10月に社長に就任されたわけですが、この間の経緯を教えてください。 鈴木社長 私の社長就任は、エクリプス日高から就任した前任社長の退任に伴うものですが、実は昨年1月に私に専務就任の打診がありまして、専務取締役になりました。思えば当時すでに前任社長の退任の話が出ていたのかもしれません。大井川鐵道の社長というのはこれまで、地域の有力者や主要株主の企業から人材を派遣して社長に就くことがほとんどだったので、生え抜きの私自身が社長になることはまったく考えていませんでした。しかし、親会社からの打診があり社長に就任しました。