大井川鐵道、鈴木肇社長「トーマス号は過去にない挑戦だった」
地域全体として観光を伸ばしていく
── 「きかんしゃトーマス号」は大井川鐵道の「顔」として定着した感がありますが、今後も観光の分野に力を入れて事業を展開していくのでしょうか? 鈴木社長 旅客輸送における定期収入は全体の3%程度でして、大井川鐵道はほぼ観光収入で運営している鉄道会社です。我々としては今後も観光事業を増やすしかないのです。ただ、トーマスは非常に革新的な取り組みで、鉄道会社としては過去にない挑戦でした。ですから今後、トーマス以上のことに取り組むというのはなかなか難しい。また、トーマスの運行は年間100本、1日1000人がマックスですので、やはりもっと電車やSLに乗っていただく努力をしていく必要があります。そういった意味では、堅実な路線を模索していきたいと考えています。 ── 堅実な路線というと具体的にはどういうことでしょうか? 鈴木社長 大井川鐵道を核に地域全体として観光事業を伸ばしていこうという機運が醸成してきていますので、地域と連携して観光の分野に取り組む方向に進んでいくのではないかと思います。 ── 地方の鉄道事業の厳しさが増す中、大井川鐵道が今後、どのような取り組みをしていくのか注目されます。 鈴木社長 3セクにもならず民間の力でよくやってきたと思います。鉄道会社としてやれることは、すべてやってきました。これまで抑制をして黒字化を図ってきましたが、雇用環境を改善し設備投資を図りながら黒字を継続していくよう努めていきたいと思います。そのためにも地域公共鉄道としての機能を維持しつつ、地域と連携し、また、地域を巻き込んで観光事業を推進していきたいと考えています。 【鈴木肇】すずき・はじめ。1962年、静岡市生まれ。名古屋商科大学商学部卒業後、1986年、大井川鐵道入社。監査室長、管理部長などを経て、2017年1月、専務取締役就任。同10月より代表取締役社長。