吉野家が買収「ラーメンの食材会社」圧倒的な凄さとは? 麺からタレまで、国内外1600のラーメン店に供給、京都の「宝産業」のこれまでと、「なぜ吉野家グループ入りした」か。
吉野家ホールディングスが4月26日、京都にある宝産業の全株式を取得し、子会社化すると発表した。宝産業はラーメン店向けに麺やスープ、タレなどの商材を開発し、販売している会社だ。 【画像】吉野家が子会社化した「宝産業」。ラーメン業界関係者なら誰もが知る、京都の食材会社の「歴史」と、高いクオリティを支える「製造現場」の様子(7枚) 吉野家ホールディングスは2016年には都内を中心にラーメン店を展開する「せたが屋」を傘下に収めており、今回の宝産業の買収でさらにラーメンに力を入れていく形になる。 宝産業とはどんな会社なのか、吉野家ホールディングスが今後ラーメンにどんな可能性を見出しているのか取材した。
■札幌ラーメンに魅せられ起業 まずは宝産業の歴史から見ていこう。 【画像】吉野家が子会社化した「宝産業」。ラーメン業界関係者なら誰もが知る、京都の食材会社の「歴史」と、高いクオリティを支える「製造現場」(7枚) 創業者の井上廣さんはもともと料理人だった。北海道で食べた札幌味噌ラーメンに魅せられ、これを京都で出したら面白いのではないかと考えた。いざ試作しようとしたが、京都の製麺所に札幌系の卵麺がなかったのである。
製麺所にないなら自分で作るしかないと、札幌の西山製麺に基礎を教わり、独自の麺を作り上げた。この麺が好評で、他のお店からも声がかかるようになったのが製麺所を作るきっかけだった。こうして1970年、宝産業が誕生した。 あまりに反響が大きく、1983年、京都の伏見に工場を構えて本格稼働することになった。当時は「どさん子」の大ブームで札幌味噌ラーメンがフォーカスされていた時期で、口コミで広がっていった。
しかし、宝産業は新興で業界に殴り込みをかけた形だったので、各方面から圧力がかかった。しまいには小麦粉が手に入らなくなってしまったという。 北海道の西山製麺に再び相談すると、小麦粉を分けてくれることになった。みんなで製麺業界を大きくしていこうという西山製麺の心温まるエピソードである。 一方、京都では低加水の白い麺が主流だったこともあり、これを2つ目の麺として完成させた。その頃、屋台で人気な「金ちゃんラーメン」というお店から相談が入る。