過剰な観光客に悩まされる欧州の人気観光地が今夏も対策 効果はあるのか?
多くの観光客が押し寄せるスペインのバルセロナやギリシャのサントリーニ島、フランスのブルターニュ地方といった欧州の人気観光地はオーバーツーリズム(観光公害)に悩まされており、民泊の全面的な禁止や日帰り旅行者数の制限など、あらゆる対策に乗り出している。 米科学誌ナショナル・ジオグラフィックは、旅行者の80%が世界の観光地のわずか10%に集中していると指摘。国連世界観光機関は、世界の観光客数が2019年の15億人から2030年には18億人に達すると試算している。 世界中で観光客が増加している主な要因として、米ニュースサイトのアクシオスは以下の3点を挙げている。まず、今日では航空券の価格(インフレ調整後)が1980年代のほぼ半分にまで下がっていること、次に、中国の新興中産階級が観光需要の大きな原動力となりつつあること、そして旅行に関する情報がかつてないほど簡単に入手できるようになったことだ。 ■観光税の引き上げや民泊の禁止に踏み切るバルセロナ 米CNBCの報道によると、スペインを訪れた旅行者は昨年、記録的な数に上ったが、その多くが地中海沿岸の人気観光地バルセロナを目的としており、同市内のホテルの数は1990年の4倍に増加しているという。 地元住民が「観光業の縮小」を求めているのは、同市が日々訪れる膨大な数の旅行者を受け入れることができないからだけではない。バルセロナを日帰りで訪れたクルーズ船の観光客は昨年、220万人に上ったが、こうした観光客の多くはホテルに宿泊することもなく、レストランで夕食も取らないためだ。また、地元の不動産所有者にとっては、米民泊仲介大手エアビーアンドビーなどを通して不動産を旅行者に短期で貸し出す方が利益になるため、地元住民は住宅市場から締め出されている。 こうした中、バルセロナのジャウマ・コイボニ市長は2028年までに旅行者向けの短期賃貸を禁止すると宣言。これにより、1万戸のアパートが地元住民向けの長期賃貸に戻ることになる。同市長は、観光税についても1人1泊当たり0.50ユーロ(約80円)引き上げ、3.25ユーロ(約523円)にするとしている。