はやぶさ2、高精度タッチダウンでリュウグウの“牙”に挑む
小惑星探査機「はやぶさ2」が目的地である小惑星リュウグウに到着したのは昨年6月27日。それから既に7か月以上が経過しました。この間、小型探査機「ミネルバ2-1」の2台のローバー(後に「イブー」と「アウル」と命名)、「マスコット」の着陸を成功させ、リュウグウ表面のデータを手にすることができました。しかし、10月下旬に実施予定だったはやぶさ2のタッチダウン(着地)運用は延期。長い準備期間を経て着地地点を選び、2月20日からタッチダウン運用を開始。はやぶさ2は同22日午前8時頃にリュウグウ表面に着地し、サンプルを採取する予定になっています。10月のタッチダウン本番の延期から着地地点決定までの準備を振り返り、タッチダウンがどのように行われるのかをまとめました。(科学ライター・荒舩良孝) 【画像】はやぶさ2、ヤマ場の小惑星「着地」は困難なミッション
昨秋、はやぶさ2に初のアクシデント
はやぶさ2は、2014(平成26)年12月3日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられて以来、大きなトラブルもなく、無事に小惑星リュウグウに到着しました。これは、小惑星「イトカワ」のサンプルを持ち帰った初代の「はやぶさ」の経験を活かし、安全を重視して運用されてきたからです。このまま大きなトラブルもなく探査が進んでいくかと思われていた2018年9月、初めての試練が訪れました。 はやぶさ2の大きな目標の1つに、リュウグウの表面に降り立ち、リュウグウを構成する物質(サンプル)を地球まで持ち帰ることがあります。その目標を達成するために、今年の7月頃までに3回のタッチダウン運用が予定されています。はやぶさ2がリュウグウに到着した当初、1回目のタッチダウン運用は昨年10月下旬頃に予定されていました。
そして、その準備のために、9月11日から12日にかけて1回目のタッチダウンリハーサルが行われたのです。ところが、はやぶさ2が高度600メートル付近に到達したとき、レーザー高度計(LIDAR)でリュウグウからの高度を測定できなくなってしまい、はやぶさ2が自律的にリハーサルを中止しました。 JAXAのはやぶさ2運用チームは、すぐに原因を探りました。調べてみたところ、はやぶさ2の機体そのものやLIDARに不具合は見られませんでした。そのため、リュウグウ表面の影響によって高度が測定できなかったのではないかと考えられています。 LIDARは、リュウグウの表面にレーザー光線を照射し、跳ね返ってきた光を測定することで、はやぶさ2とリュウグウの間の距離を測ります。はやぶさ2は、自転するリュウグウに向かって徐々に高度を下げていくので、リュウグウの表面では、レーザー光線が当たる場所は常に変わります。 テレビや新聞などの報道では、白っぽい色をしたリュウグウの画像がよく使用されるので、リュウグウは白っぽい色をしていると思う人も多いでしょう。しかし、これらの画像は、リュウグウの様子を分かりやすくするために明るく撮影されたもので、実際のリュウグウはかなり色が黒い小惑星です。 表面の色が黒っぽいと光の反射率は小さくなります。また、リュウグウの表面はとてもデコボコしているので、レーザー光線がまっすぐ反射しなかった可能性もあります。つまりこのとき、はやぶさ2が高度を計測できなかったのは、レーザーが当たった場所の反射率がより低かったか、表面の形状によってまっすぐ反射しなかったかのどちらかだと見られています。