年金の繰下げ受給、やっぱりやめます!…年金月20万円、定年後も働く64歳・サラリーマンが驚愕した年金制度の思わぬ「落とし穴」【CFPの助言】
年金の受け取り損
年金を繰り下げると将来の年金額は増額しますが、受け取りを開始してすぐに亡くなってしまうと、繰り下げ損になる可能性があります。 繰り下げた期間中は年金を一切受け取れないため、結果的に受給額の増額分よりも未受給期間が長くなると、総受取額が少なくなってしまうのです。今回の場合、鈴木さんの上司がまさしくこれに該当します。 70歳まで繰り下げた場合の受給総額が65歳受給開始を上回るのは「81歳」となります。 つまり、70歳まで繰り下げた場合に81歳より早く亡くなってしまうと、「繰り下げ損」になってしまいます。
税金や社会保険料負担の増加
税金や社会保険料負担の増加も見逃せないデメリットです。繰下げ受給をすると年金が増額しますが、それに伴い以下のような税金や社会保険料負担も増えてしまいます。 ・所得税 ・住民税 ・健康保険料 ・介護保険料 このように、年金の増額に応じて税金や社会保険料負担も増加するため、年金の額面が増えたからといって、手取りの金額が同じ割合だけ増えるわけではないことを理解しておく必要があるでしょう。
在職老齢年金による年金の支給停止
在職老齢年金による年金の支給停止額は、増額の対象にならない点も見落としがちなデメリットです。 まず「在職老齢年金」とは、年金を受給しながら給与や役員報酬を受け取っている場合に適用される制度です。受給資格者の総報酬月額と基本月額(老齢厚生年金)の合計が50万円を超えると、超えた部分の2分の1が支給停止となります。 支給停止額の計算式は以下のとおりです。 (基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2 ここで注意すべき点は、老齢厚生年金を繰り下げると、「在職老齢年金」の支給停止額が増額の対象にならないことです。 以下の条件で支給停止額がいくらになるか試算してみましょう。 ・総報酬月額:55万円 ・年金月額:15万円 ・繰り下げ期間:5年 支給停止額は (55万円+15万円-50万円)÷2=10万円 このケースなら10万円が支給停止となり、本来受け取れる年金月額15万円のうち、5万円しか繰下げ受給による増額が適用されないのです。 年金の繰下げ受給には、そのほかにも加給年金を受け取れなくなることや、増額分が遺族年金に反映されないなどのデメリットがあります。年金の繰下げ受給を検討する場合はこれらのデメリットを十分考慮したうえで選択する必要があるでしょう。