100歳超が全国平均の3倍…「日本一のピンピン長寿地域」京都府京丹後の高齢者が毎日食べている"健康食材"
■ただ長生きなだけではなく、若くて元気 ちなみに、京丹後地域は、100歳を超える百寿者の割合が全国平均の約3倍という長寿地域ですが、京丹後の人の腸にもアッカーマンシア菌(※)はほとんどいません。そもそも、国内で沖縄以外のエリアではアッカーマンシア菌はほとんどいないのです。 ※生活習慣病対策や長寿の研究で世界的に注目を集める菌。肥満や血糖値の高い人の腸に少ないと報告されている。 にもかかわらず、日本人の平均寿命が世界トップクラスということを考えると、日本人の長寿の理由は、アッカーマンシア菌とは別のところにある可能性が高いでしょう。 京丹後地域の人たちはただ長生きなだけではありません。インフルエンザが全国的に流行したときも、京丹後の高齢者は感染率が非常に低く、サルコペニア(加齢による骨格筋量の低下および筋力の低下)の人も10%を切っています。 しかも、大腸がんの罹患率は京都市の半分以下です。血管も若い、免疫も若い、筋肉もしっかりして、フレイルや認知症も少ないという、特異な集団です。 ■野菜や全粒穀類、海藻を毎日食べている そこで、この地域ではどのような食事が多いのか、調査を行ったところ、京丹後の高齢者は、京都市内在住の人に比べ、野菜や果物、豆やイモや根菜類、全粒穀類や海藻を食べる頻度が明らかに多かったのです。 ---------- 京丹後在住51人、京都市内在住50人を対象に食事調査。食物繊維を多く含む食材や、ヨーグルトなどをどれくらいの頻度で食べるか尋ねたところ、京丹後市のほうが食物繊維を含む食材を毎日食べる人の割合が高かった。 ----------
■肉より魚が多い「伝統的な日本食」 ---------- 長寿者の多い京丹後地域の人の食事調査から食物繊維摂取量を推定したところ、緑黄色野菜以外の淡色野菜が多かった。淡色野菜の多くは根菜類に当たる。 ---------- このことからわかるのは、食物繊維の摂取量が多いこと。特に根菜類から多く食物繊維をとっていることがわかってきました。また、海が近いこともあって、魚をよく食べ、肉を食べる頻度は少ない――。いわゆる伝統的な日本食ですが、実は地中海食との類似点も多いのです。 さらに、京丹後と京都在住者各51人の腸内細菌を比較してみると、京丹後の人の腸には、京都在住の人に比べて酪酸産生菌が多く、寿命短縮の可能性のあるプロテオバクテリア門の菌は少ないことが確認されました。 酪酸産生菌といっても、菌種はさまざまです。酪酸産生菌によって腸の中でつくられた酪酸は、過剰な免疫反応を抑える抑制系の免疫細胞(Tレグ細胞)の働きを高めたり、腸の内側に広がる腸管上皮細胞のエネルギーとなって、異物の侵入を防ぐ粘液(ムチン)の分泌や正常な蠕動運動を促したりすることが知られています。 ■日本人ならではの「長寿食」を研究中… いま、私たちの研究チームは長寿につながる日本人向けの食事パターンを見つけ出そうと研究しています。先の食事調査からわかってきたように、食物繊維が重要です。 さらに日本人の健康には、ブラウティア・コッコイデスという菌とビフィズス菌が多いことも長寿と関係していると私は考えています。 そして、こうした日本人ならではの有用菌を増やすのに、「麹」がカギを握るのではないでしょうか。