「STAP論文」を調査委が否定 再現実験はムダだった?
認定された研究不正は“氷山の一角”
しかしながら、この調査には疑問がないわけではありません。たとえば、調査対象には、責任著者であるチャールズ・バカンティ氏(ハーバード大学)の名前がありません。調査委員会の会見に続く理研理事らの会見では、有信睦弘氏は次のように説明しました。 「ハーバード大学と情報交換をしており、同大でも調査が始まったと聞いています。しかし今回の調査対象にはなっていません。これまでの調査結果はすべてハーバード大学に伝えてあります」 また報告書には、不正とは認定されなかった図表16点についても、「小保方氏にオリジナルデータの提出を求めたが、提出されなかった」、「提出されなかったため、不適切な操作が行われたかどうかの確認はできず、研究不正とは認められない」といった記述が散見されます。怪しいと疑われた図表について、オリジナルのデータを示して反論できないのであれば、それは捏造または改ざん、つまり不正とみなされるべきではないでしょうか。これで不正とみなされないなら、捏造や改ざんを疑われてオリジナルデータを出せといわれても、何からの理由をつくってデータを出さなければ不正とはみなされない、ということになってしまいます。 実際、報告書も「ここで認定された研究不正は、まさに“氷山の一角”に過ぎない」と認めています。同時に「STAP論文の研究の中心の中心的な部分が行われた時に小保方氏が所属した研究室の長であった若山氏と、最終的にSTAP論文をまとめるのに主たる役割を果たした(故)笹井(芳樹)氏の責任は特に大きいと考える」と、理研の研究体制そのものについても厳しく批判しています。
不正が確認されれば再現実験は必要なかった
筆者が最も強く疑問に思ったことは、今回の「研究論文に関する調査」よりも、12月19日に最終的な報告がなされた「STAP現象の検証」のほうが優先されてきたように見えることです。実際、後者のほうが先に報告されました。前者は「不正の有無」を調べるための調査であり、後者は「再現性の有無」を調べるための実験です。前者で不正があることとその内実が確認されれば、理研自身による検証実験≒再現実験など必要なかったはずです。