NY地下鉄新型電車、日本では当たり前の「初採用」とは? 川崎重工製、納入後にはシェアで圧倒的首位に「鉄道なにコレ!?」【第48回】
米国最大の都市、ニューヨークの地下鉄で川崎重工業のグループ会社が製造した新型電車「R211」が営業運転を始めた。ニューヨーク地下鉄用車両のメーカー別シェアで首位の川崎重工は、R211の納入後に圧倒的なトップに立つのは確実だ。最大で1612両を納入する可能性があり、その場合は総額約37億ドル(1ドル=140円で約5180億円)と川崎重工の鉄道車両受注で過去最大案件になる。年内にはニューヨーク地下鉄としては「初採用」の構造を用いた編成も登場予定だが、同様の構造を見慣れた日本人は「これが初めて!?」と意外に思うかもしれない。(共同通信=大塚圭一郎) 筆者が記事に盛り込めなかった話を含めて音声でも解説しています。共同通信Podcast #38【きくリポ】を各種ポッドキャストアプリで検索いただくか、以下のリンクからお聞きください。 https://omny.fm/shows/news-2/38-4
【ニューヨーク地下鉄】米東部ニューヨーク州などが資金を拠出している独立法人、都市圏交通公社(MTA)傘下のニューヨーク市交通局が運行している地下鉄。ニューヨーク中心部のマンハッタン島では路線が網の目のように張り巡らされており、通勤客や観光客らに幅広く利用されている。MTAによると、25系統の路線と計472駅がある。24時間走っており、路線総延長は400キロ弱と地下鉄としては中国の首都北京、中国・上海、英国の首都ロンドンに次いで世界で4番目に長い。新型コロナウイルス禍前の2019年の年間利用者数は延べ約16億9800万人に達していた。 ▽川崎重工製がゲームチェンジャーに 「落書きだらけでよく故障し、治安も良くないというのが1970年代から80年代初めにかけてのニューヨーク地下鉄のイメージだった」と当時を知る米国人は述懐する。 ゲームチェンジャーとなったのが、川崎重工が1982年に初めて受注したニューヨーク地下鉄向けのステンレス製車両「R62」だ。高い品質と耐久性が持ち味で、川崎重工の元役員は「当社が造ったR62は故障が起きるまでの走行距離がそれまでの車両より格段に長くなり、運行当局が目を丸くした」と振り返る。都市圏交通公社(MTA)によると、地下鉄車両が修理を受けるまでに走った平均距離は1982年に約1万1500キロだったのが、2019年には約20万5600キロと18倍弱に延びた。