オードリー・タンが都知事選候補のなかで注目している「開成東大卒の天才AIエンジニア」の正体
9歳で独学でプログラミングを学ぶ
6月20日に告示日を迎える東京都知事選。そこで、ひとりの天才エンジニアの出馬が注目を集めている。 名前は安野貴博。6月6日の記者会見で立候補の意を表明すると、各界から反響が続出し、一躍注目候補に躍り出た。 なかでも熱いメッセージを寄せたのが、台湾の元デジタル担当大臣、オードリー・タンだ。 タンは2016年、35歳の若さで入閣したエンジニア出身の天才閣僚。タンのデジタル政策と強いリーダーシップで、台湾は見事なコロナ対応をおこない、「日本にオードリー・タンがいればなあ」と嘆く声が多く挙がったことは記憶に新しい。 タンは出馬の構想を語る安野に「彼の考えるデジタル民主主義がすごく好きだ。安野氏は『私たちは良い方向に変われる』と言っている」と大きな期待を寄せた。 デジタル民主主義とは、政治や行政をデジタル技術の力でより身近な存在にするとともに、多様でより良い社会を目指す思想である、と安野は解説する。 「私が主張している新しい政治のやり方は、私に能力があるから優れているのではありません。『みんなで考え、みんなで決める』から優れているのです。それが、これからの世界に必要なデジタル民主主義のあり方です。私自身が育った東京という都市は、もっと良い方向に変われる都市だと思っています」 オードリー・タン同様に、安野もまたエンジニア業界で「天才」だと周りから一目置かれてきた。しかし、本人は会社員の父とパートとして働く母という、いわゆる「ふつうの家庭」で育った。9歳でパソコンに出逢った安野は、独学でプログラミングを始める。名門・開成中学校に進学後は、17歳にして全自動の「画像命名サービス」を開発し、話題を呼んだ。現役で東京大学に入学し、人工知能研究のエキスパートが集まる松尾豊研究室で学びながら、国会の議事録のデータ解析サービスや、クラウドソーシングのレビューシステムを独力でリリースした。 その後、外資系コンサルティング会社ボストンコンサルティンググループ(BCG)を経て、AIスタートアップ企業を2社創業。経営者兼エンジニアとして手腕を発揮する一方で、2022年には「ハヤカワSFコンテスト」で優秀賞を受賞し作家デビュー。同時期に、世界一の美大であるロンドンの王立美術院で準修士も取得し、AIを使ったアーティストとしても活動している。 圧倒的エリートの彼だが、なぜ今回都政を目指したのだろうか。その背景には安野が抱える「危機感」があったという。 「いま、私たちは岐路に立たされています。テクノロジーには『いい使い方』と『悪い使い方』があります。テクノロジーをうまく使えば、社会がより発展していくのに、フェイクニュースなどの『悪い使い方』のほうがはびこっている。政治の世界でも同じです。リーダーがテクノロジーを理解し、正しく使いこなせなければ、この国の未来は暗い」 しかし、テクノロジーの力を活用すれば、東京はもっと豊かで住みよい街になるのだと安野は力説する。 「テクノロジーは、本来は人が苦手なことを助けるためにあるのです。視力が悪い人にはメガネを、計算が得意でない人には電卓を。同じように、AIをはじめとするテクノロジーが、誰もが簡単に使えるようにきちんと普及すれば、一人ひとりの“苦手”に対応することができる」