NY地下鉄新型電車、日本では当たり前の「初採用」とは? 川崎重工製、納入後にはシェアで圧倒的首位に「鉄道なにコレ!?」【第48回】
納期を守る姿勢も評価され、川崎重工はその後も「R160」や「R188」などの電車を受注。これまでに累計2200両を超える車両を納入し、メーカー別シェアで約3分の1と首位に立つ。 MTAは次世代車両R211の発注先を決める2018年の入札で川崎重工を選定し、基本契約の535両を14億ドルで発注。2022年10月にR211の640両を追加して累計1175両となり、今後も追加発注する見通しだ。 ▽中国メーカーとの受注合戦を制する 私は共同通信ニューヨーク支局駐在中の2016年9月、川崎重工がR211の入札に参加する方針を固め、鉄道車両世界最大手の中国中車(CRRC)などとの受注合戦になる見通しになったと最初に報じた。 関係書類によると、CRRCは現在のアルストムに再編された旧ボンバルディア・トランスポーテーションと組んで入札に挑んだものの、MTAが求める最低限の技術要件を満たさなかったため敗北。旧ボンバルディアが受注した車両「R179」の納入が契約より2年超も遅れたのも懸念材料となり、業界関係者は「CRRCは米国での納入実績が乏しいのを補うためにニューヨーク地下鉄に大量供給してきた(旧)ボンバルディアと組んだものの、それが裏目に出たようだ」との見方を示した。
これに対し、MTAは川崎重工が製造したR160とR188が「高水準の信頼性を達成した」と評価。川崎重工が提示した最大1612両を納入した場合の総額約37億ドルはMTAの当初想定額(44億8千万ドル)を2割近く下回り、白羽の矢が立った。 ▽コロナ禍の供給網混乱と大量退職による人手不足が直撃 新型電車の「R211」は車体がステンレス製で1両当たりの長さが約18・4メートル、幅が3メートル、高さが約3・7メートル。1編成当たり5両だが、通常は2編成を連結した計10両で運転される。 車体の組み立てと主な機器の取り付けは米中西部ネブラスカ州にある川崎重工のグループ会社のリンカーン工場で、最終組み立てと点検をニューヨーク州のヨンカース工場で手がける。川崎重工は米国で生産することで現地の雇用を生みつつ「耐久性が高い車両を、納期通りに納めてきたことで信頼を勝ち取ってきた」(元役員)と自負してきた。