【闘病】お腹が痛む原因は「濾胞性リンパ腫」… ステージ4まで進行していた
新しい治療方法により、副作用がかなり楽に
編集部: その後の体調や生活はどうですか? 比志さん: 2022年の春、CT画像検査で肺の腫瘍らしき影が大きくなっていることが分かり、気管支鏡検査を受けました。結果はリンパ腫の病変で、心配されていた肺がんではなかったことで主治医はホッとしていたようですが、これをもって2回目の再発となりました。 そこからしばらく経過観察となりましたが、徐々にリンパ節の腫れが目立つようになり、辛い症状が出るようになりました。 編集部: 経過観察中に引っ越しをされたそうですね。 比志さん: そうなんです。自然豊かな環境での暮らしは心地の良いものではありますが、病人にとって冬の厳しい寒さは体に応えます。商業施設や病院も近くになく、通院には車で片道1時間かかります。体力がない私にとって、そういう不便さがストレスでした。 病院や治療方法を選ぶ選択肢が少ないことも田舎暮らしのデメリットです。愛犬が死んでしまい、生きる糧を失っていた事もあり、「環境を変えたい。もう少し住みやすい、便利な環境で暮らしたい」と夫に相談しました。 最初は承諾されませんでしたが、話し合いを繰り返し、2023年の秋に念願の街に引っ越しました。 受診できる大きな病院が近くにあり、商業施設も徒歩や自転車で行ける距離にあるけれど、都心のような人混みや賑やかな場所ではなく私にとって「ちょうどいい」環境での生活が始じまりました。 田舎暮らしと比べると、徒歩で行けるところが増えて精神的に楽になりました。今では自転車で通院できるようになり、この手軽さに感動しています。 編集部: 転院先での診察はどうでしたか? 比志さん: 引っ越し先にある総合病院に転院して、その前から悪化していた病状と辛い症状について相談しました。右脇のリンパ節の腫れがどんどん大きくなり、痛みと倦怠感や微熱が続くようになっていたので、新しく主治医となった医師から治療を勧められました。 この時、提案されたのはレナリドミド+リツキシマブ併用投与となる「R2療法」という新しい治療方法で、副作用はかなり軽減されていると説明を受けました。 脇のリンパ節が成人男性の握り拳よりも大きく腫れ上がり、激痛と発熱で入院してすぐに麻薬性鎮痛薬が投与され、同時に抗がん剤の投薬も開始しました。 薬の副作用で高熱が出たり、全身に発疹(薬疹)が出て痒みで眠れなかったりと苦しい10日間の入院ではありましたが、退院する頃には体力は落ちていたものの、リンパ節の腫れは小さくなってようやく腕を動かせるようになり、腫れて見えなくなっていた鎖骨も見えるようになっていました。 編集部: 現在はどうですか? 比志さん: 現在はリツキシマブの投薬期間が終わり、レナリドミドの服薬を続けているところです。始めの頃に発疹や便秘の副作用が出たので、段階的に減量して服薬を続けています。 治療期間の約半分が経過しようとしている段階ですが、体調にムラがあるものの、強い副作用に悩まされることはないです。血液検査の数値も特に問題なく、脇のリンパ節の腫れはほぼなくなり、触診で分かるような腫れた箇所は無くなりました。 編集部: 治療以外で大変だったことは? 比志さん: お金のことですね。経済的には常に厳しい状況でした。働きにいける体力もなく、細々と翻訳の仕事をし、家事をこなすだけで精一杯でした。 夫の収入で暮らしていくことはできましたが、やはり医療費が一番大きい出費になっていましたし、高額療養費制度を利用したとしても治療期間中はなんとかやりくりしている状況でした。 一度、「障害年金の受給申請をしたい」と医師に診断書を作成してもらい、社会福祉士の方に話を聞いて、年金事務所に問い合わせましたが、私の場合は障害等級「3級」に該当し、これは厚生年金保険に加入していることが条件だったので、申請資格がなく断念するしかありませんでした。 ほかにも「⻑期療養者就職支援事業」という、ハローワークに相談すると、病状や状態に合わせて、どのような就労が可能かなどの情報提供や職業紹介をしてくれる事業があります。 私も何度か利用しましたが、療養者を雇用する企業が少なく、実際に就労が成立する確率は少ないように思いました。 編集部: 最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。 比志さん: この濾胞性リンパ腫という病気は治療を受けても寛解しづらく、また再発率が非常に高いと言われています。私もこの12年で3回の抗がん剤治療を受けています。 初回と2回目の治療では副作用で苦しい想いをしたので、抗がん剤を使った治療は「恐ろしい」と思い込んでいましたし、再発するたびに絶望していましたが、3回目では、これまでと比べ物にならないくらい楽に治療を受けることができていて、治療薬の進化を実感しています。 近年、ブログやSNSコミュニティなどで同じ病気を経験した人の言葉を読むことができたり、情報交換できたりする機会が増えましたが、当時はそういう場も少なく「ほかの人はどんな治療をしているんだろう」「どんな生活をしているんだろう」などと情報に飢えていました。 もちろん、プライバシーに関わることなので、発信することはリスクもあり、勇気がいることだと思います。 しかし、私が発信することで、同じように苦しみ、悩み、辛い経験をされている方が「自分だけではないんだ」と少しでも心の安堵を感じられるようになれば、私の経験も報われるような気がしています。