群馬県庁動かす10代の提言 子宮頸がん予防やサイクルツーリズム…高校生メンター奮戦
提言がすべて実現するわけではない。だが11月上旬が期限の来年度予算要求に盛り込めるか否か、関係部局と高校生たちのすり合わせが進む。
■ワクチン接種へ女子高生の思い
1年目の昨年度は手探り状態で、提言も生徒会活動への助成や校則関連など事業化しにくい校内事案も少なくなかった。一方で「県政を動かした」と知事が絶賛する提言もあった。
「子宮頸がんへの関心を広め、ワクチン接種などで罹患(りかん)率ゼロを目指す」。国内では厚労省が積極的勧奨を一時中止した経緯があり、接種励行の雰囲気は薄かった。だが当事者の女子高生たちの思いが提言となり県を動かす。接種で撲滅も視野に入る豪州やカナダなどの事例も知り、啓発ステッカー付き生理用品の校内配布、TikTok(ティックトック)での啓発動画などを展開した。
ショッピングモールでのワクチン接種は全国初の群馬モデルとなり、提言を基につくられたラジオCM「子宮頸がん予防ラップ/ねえねえ知ってた?」は日本民間放送連盟賞(優秀賞)に選ばれた。観光とサイクリングを結び付けた「サイクルツーリズム」を提唱した高校生が、山本知事と草津温泉を自転車で走る動画も制作された。
■きっかけは「こども基本法」
高校生メンター制度導入へ群馬県がかじを切るきっかけは、令和4年6月に成立したこども基本法だ。11条で子供施策策定に当たり、子供の意見反映に係る措置を講ずることを国や自治体に義務付け、こども家庭庁は自治体向けに「Q&A」まで策定したが、役所側は困惑。ただ聞くだけの形式的措置が目立つ中、群馬県は知事の判断で10代のメンターを誕生させた。
自称「10歳以下まで下げられる」という山本知事の幅広い精神年齢もあって、メンターたちは「10代の友だち」(知事)として扱われ、提言会後は多くが「緊張したけれど、貴重な体験で楽しかった」と答えた。
山本知事は「県民との対話交流会の質疑で最近、高校生がいの一番に質問するようになった。メンター導入の副次的効果と思う。群馬は高校生が元気です」。そんな効果を期待して今年、福岡県古賀市が高校生メンター制を導入した。ほかにも導入に向け複数の自治体から問い合わせもあり、広がりを見せている。(風間正人)