新NISAで家計の「外貨」保有比率が過去最高。四半世紀で「5倍増」の意味は…
売られた円が戻ってくる保証はない
筆者がBusiness Insider Japanへの寄稿などを通じて、新NISAを利用した外貨性資産への投資すなわち円売り(そしてそれに起因する円安圧力)の問題を繰り返し指摘するのは、一度国外に出て行ってしまった円は「半永久的に戻らない」という事実が軽視されているように思うからだ。 新NISAは老後資金を形成するために活用するものだから、外貨建てで運用しても最後には円転(円買い)されて戻ってくるだろうし、それが円高圧力になる可能性も確かにある。 しかし、それがいつどんな規模で起きるか、想像してみてほしい。複利効果に期待する制度であることを踏まえれば、少なくとも数年単位の話ではあり得ない。 そうしている間にも毎年、社会人になる新たな世代は次々に新NISAでの積み立てを始めることになる。 そうした新たな世代は、昭和~平成期の「強い円」を知らない。物心が付いた頃から「弱い円」を生きる彼ら彼女らが、過去の世代と同じように円を安全資産と考え、現預金として手元に置こうと考えるだろうか。 また、世代交代的な話を無視しても、やはり外貨建て資産が最後に円転されて戻ってくるとは限らない。すでに外貨を外貨のまま利用するサービスを提供している金融機関も存在する。日本の経済・金融情勢が今後さらに悪化した場合、そうしたサービスの需要が増えていく可能性も十分考えられる。 円安による輸入価格上昇の影響で実質所得が悪化し、個人消費ひいてはGDP(国内総生産)の停滞が深刻化しつつある日本経済。そうした現状を目の当たりにして、なお「家計の円売りが増えてきました。円安と関係あるかもしれませんね」などと静観していていいのだろうか。 ※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
唐鎌大輔