新NISAで家計の「外貨」保有比率が過去最高。四半世紀で「5倍増」の意味は…
「資金循環統計」の見方には要注意
なお、前節で参照した日銀の資金循環統計だが、家計部門の投資行動における変化を把握する上で非常に重要な注目すべきデータであることは間違いないものの、実態を的確に反映できているかどうかという点ではやや難もあり、過度な依存は避けねばならないと考えている。 例えば、過去の寄稿(2023年10月16日付)でも指摘したように、日本の国際収支におけるサービス収支の中で、再保険・貨物保険の損害保険料などを計上する「保険・年金サービス」の赤字幅が急拡大し、近年の収支悪化の要因となっている【図表3】。 保険・年金サービスの赤字拡大すなわち国外への支払い増の背景として、日銀は次のような事実を挙げている。 「国内で投資性の強い保険商品の契約が増えている中、本邦の保険会社が市場リスクを抑制するために海外の再保険引受会社と結ぶ再保険契約も増加している」 日銀の指摘する「投資性の強い保険商品」とは、保険料の払込みや保険金・解約返戻金などの受け取りを外貨で行う「外貨建て保険」などを指す(なお、外貨建て保険については、販売時に他の金融商品との比較説明が十分行われていないなどの問題が浮上し、金融庁が監督強化に乗り出している)。 上記のように販売額を増やしている外貨建て保険が、資金循環統計の上では円貨性の「保険・準備金」に計上されているのだとすれば、外貨性資産の構成比率は筆者が試算した数字(4.2%)を上回る可能性もある。 そうした実態との幾分のかい離を意識して参照せねばならないのが、現在の資金循環統計の弱点の一つだ。 また、統計の発表時期が遅いという弱点もある。日銀の公表時点で、そこに記載された数字は3カ月前(例えば、今回6月27日に公表されたのは3月末時点の統計)のものだ。 しかし、家計の外貨投資への殺到もしくは「家計の円売り」が日本経済にとって差し迫ったリスクかどうかを検討しようという時、参照すべき統計の公表を3カ月も待っていたのでは判断も対応も手遅れになりかねない。 「周囲でみんなやっているから」といった雰囲気に流されて一気呵成に動くことも多い日本人の気質を踏まえればなおさらだ。