クリスマスに観たい!バレエダンサー・柄本 弾さんが語る、バレエ『くるみ割り人形』の魅力
ドロッセルマイヤーを演じる楽しさ
──今回はミステリアスな雰囲気のマーシャの叔父、ドロッセルマイヤーも踊られますね。王子と同じぐらい柄本さんのハマり役だと定評があります。経験を積んできたことで変わってきた部分があれば教えてください。 「年々アホになってきています(笑)」 ──どういうことですか!? 「恥じらいがなくなってきた、という感じですね。ドロッセルマイヤーは、第1幕冒頭の客間のシーンで子どもたちに人形劇を見せたり、プレゼントを渡したりして、みんなを楽しませることを第一に考えている、という人物像が僕の中にはあって。彼は毎年それを楽しみにマーシャの家のクリスマスパーティーにやってくる。子どもたちの設定は5、6歳ぐらいなので、どれだけ面白いおじさんになれるかということを意識して演じています。 実際に踊るのはバレエ団のダンサーたちなので、以前は恥ずかしさも少しあったのですが、年々振り切れるようになってきてすごく楽しいです。謎めいている部分がある役ですが、僕自身、もともと楽しいことが大好きな人間なので、ミステリアスさみたいなものは特に意識していません」
──恥じらいがなくなってきたのはいつ頃から? 「今思えば入団早々になかったかもしれませんが、ここ数年だと思います。おそらく誰もがそうだと思うのですが、何が正解なのかがわからない状況だと、振り切ることに抵抗があって。やりすぎたことによって笑われないか、とか。でも、振り切ったことで見えてくるものがありますし、極端な話、そこからあとは調整すればいいだけなので、まずは恥じらいを捨てて一度振り切ってみることが役作りのうえで大事だと考えています。 ただし、いきなり振り切れるかといったら、そんなに簡単ではないとも思うんですよね。この友佳理さん版の『くるみ割り人形』は初演から出演してきたからこそ、友佳理さんがどういうものを求められているのかがわかりますし、リハーサルの段階から試行錯誤していろいろなドロッセルマイヤーを試して、最終的に自分にはこれが合っているという延長線上で振り切っているので。さまざまな経験が、僕ならではのドロッセルマイヤーをつくってくれたのではないかと思っています。今回もどれだけ子どもたちを楽しませられるか、今からわくわくしています」