実はフェイクだった有名なリンカーンの写真など、お騒がせな歴史的肖像5選
ウィンストン・チャーチル
これは英首相ウィンストン・チャーチルの写真としてはおそらく最も有名であり、また彼の逆鱗に触れたものでもある。1941年、チャーチルのカナダ滞在中、写真家のユーサフ・カーシュは、この英国人政治家の写真を撮る機会を1度だけ与えられた。 カーシュによると、「チャーチルは絶えず葉巻をくわえて」おり、「灰皿を差し出しても、それを捨てようとはしなかった」という。カーシュはカメラのところへ戻り、チャーチルが自ら葉巻を口から外すのを待った。 しばらくののち、カーシュは「チャーチルに近づくと、その場の思いつきで、しかし非常に丁重に、『お許しください、サー』と言って彼の口から葉巻を抜き取った」。カーシュは言う。「私がカメラの前に戻ったとき、チャーチルはあまりの敵意に、こちらを食い殺しそうな表情をしていた。写真を撮ったのはその瞬間だった」 この写真は結果として、チャーチルを永遠に象徴する瞬間をとらえたものとなった。
レオポルト1世
数多くの肖像画にはさほどはっきりと描かれていないが、神聖ローマ皇帝レオポルト1世はハプスブルク家の人間に特徴的な顎(あご)を持っていた。下顎が極端に前に突き出るこの症状は、現代では下顎前突症(かがくぜんとつしょう)と呼ばれている。 気に入らなかったのかもしれない身体的な特徴(近親交配によるものと考えられている)を強調する代わりに、この肖像画は、レオポルトの姿をどこか華やかで際立った存在として描いている。 レオポルトの外見には、思わず目を引かれる明確な特徴がある。たっぷりとした茶色の髪が流れ落ちる肩から、鑑賞者の視線はこの17世紀末の支配者の口元へと導かれる。ベンジャミン・フォン・ブロックが描いた丸みを帯びた真紅の唇は、赤い背景と皇帝の体を包むマントによって、さらに際立った印象を放っている。しかし、フォン・ブロックがいかに力を尽くそうとも、レオポルトの異名「ホグマウス(ブタの口)」のもとになった特徴を完全に隠すことはできなかった。