【プレイバック’94】「貯水率0%」香川県を干上がらせた「平成の大干ばつ」首都圏に迫っていた危機
10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたび振り返る【プレイバック・フライデー】。今回は30年前の1994年8月5日号掲載の『気象庁もサジを投げた〝四国の地獄〟が東上!「水飢饉の夏」日本はどうなる』をお届けする。 【危機的状況】すごい…首都圏の〝水ガメ〟八木沢ダムの惨状 1994年、日本各地では春からの少雨に加えて梅雨の降水量も例年の半分以下だった。さらに7月から8月にかけて、連日記録的な高温の日が続いたことによって、西日本を中心に「平成の大干ばつ」が起こることとなる。とくに四国・香川県の水不足は危機的な状況だった(以下《 》内の記述は過去記事より引用)。 ◆市の半分が24時間断水になる 《「ウチは普段1日約5tの水を使用します。うどんを洗う時は水道水でないと。水がなければどうしようもありません」 高松市内のあるさぬきうどん店の店主は、こうタメ息をつく。 香川県内の水不足は危機的状況だ。高松市の飲料水の65%をまかなう四国の〝水ガメ〟吉野川水系・早明浦ダムの貯水量は、20日現在1千321万t。貯水率7.6%で、毎日2%ずつ減っているというから、このままいくと7月23日か24日には、完全に干上がってしまう。 ついに高松市は15日から、午後4~9時までの「1日5時間給水」を実施。市民はポリ容器を買いに走り、お皿にラップをして使ったり、レトルト食品を買いだめしたりして節水しているという。水を大量に使用する名物のうどん店を始め、ホテル、理髪店、工場などの中には休業するところも出てきた。農業用水の確保に井戸掘りも復活した。》 井戸掘りは1955年ごろがピークで、この当時はほぼ消滅していた。10年ぶりに井戸を掘ったという職人のもとには1週間に10件もの依頼が殺到したという。 香川県は元々雨が少ない土地柄だ。だからこの19年前には吉野川から水を引く「香川用水」を作った。だが、この香川用水に水を流す上流のダムに水がないのだ。香川県知事が徳島県知事に水を回してほしいと要請しても、徳島県も水不足。県の渇水対策本部によれば「もし、香川用水からの取水がまったくできなくなった場合、市の半分は24時間断水になる」というまさに〝地獄〟だった。 一方、猛暑が続く首都圏にも、危機的状況が迫っていた。 《首都圏でも、2日から利根川水系で10%の取水制限が実施されることになった。群馬県・八木沢ダムの貯水率は、20日現在19%、湖面が25m下がっている。今のところ都民の水は多摩川水系で補っているが、こちらも75% (20日現在)で、都は4年ぶりに渇水対策本部を設置した。 「原因は空梅雨。もし東京が高松のようになると、東京オリンピック以来給水車が出ていないし、渇水の経験があまりないので、どんなパニックになるか予測できません」(関東地方建設局河川調整課)》 気象庁によれば、8月まで晴天が続き降雨量は少なめとの予報だった。東京も〝砂漠〟となる可能性は十分にあるのだ──。 この1994年の夏、7月22日から9月19日まで、利根川水系では取水制限が行われた。東京都でも7月29日から9月8日まで、最大で15%の給水制限が行われることとなったが、関東地方では一部の地域を除いて断水になることはなかった。 四国では1994年7月25日に台風7号が上陸して四国地方に大雨を降らせたため、一時はダムの貯水量はわずかに回復したものの、再びの猛暑によって早明浦ダムの貯水量は8月19日についに0%となる。高松市では9月30日まで断水が続くこととなった。最も長期化したのは福岡市で1994年10月になっても市内のダムの貯水率は30%ぐらいまでしか回復せず、断水は翌年の6月まで、295日間におよんだ。 干ばつの原因は、水を使用する人口の増加と、地球温暖化による気候変動だといわれている。近年では温暖化の影響といえば、猛暑とゲリラ豪雨のイメージのほうが強い。だが’21年には北海道で「100年に一度」と言われる少雨と高温により災害級の干ばつが発生、農作物に被害をもたらしている。日本は雨が多いが、河川が短く流れが速いために水資源の確保は難しい土地柄といわれている。異常気象によって、いつまた干ばつがもたらされるかわからないのだ。
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