天然の「金塊」ができるのはなぜ? 長年の謎の答えは「たくさんの地震」か、研究
実験に成功した研究者が結果に歓喜、なぜ石英の鉱脈から大半の金塊が見つかるのか
歴史上、人々はいつも懸命に金を追い求めてきた。しかし今では、金塊を探し出すのはそう難しくない。世界中の金塊の多くは、石英(水晶)の天然鉱脈から見つかるからだ。ただし、そもそも金塊がどのようにして石英の中に閉じ込められたのかという地質学的なプロセスは、謎のまま残されていた。 【動画】形が奇妙すぎる金塊、130年ぶりに結晶構造が判明 2024年9月2日付けで学術誌「Nature Geoscience」に発表された新たな研究により、この謎に対する驚くべき、かつ説得力のある一つの解答がもたらされた。その答えとは、電気と地震、それも、たくさんの地震だ。 金塊が石英の中に存在するのは、石英が電気的に奇妙な性質をもつためだ。圧縮されたり、揺らされたりすると、石英は電気を発生させる。この電気が、地殻内にある液体の中に溶けている金や金のナノ粒子を引き寄せる。それらは集まって小さな粒となり、やがて十分な電気刺激を受けることで金塊へと成長していく。 「石英を振動させると、電気が作られます。電気が作られると、金が出現します」と、オーストラリア、モナシュ大学の地質学者で、今回の論文の筆頭著者であるクリストファー・ボイジー氏は言う。 そうした振動の自然な発生源として最も可能性が高いのは地震であり、研究チームによる室内実験では、地震が金塊を作り出せることが示されている。
金のクモの巣
金はさまざまな鉱床から取り出されるものの、石英の鉱脈からは特に頻繁に発見される。遠くから見ると、真っ白なその鉱脈は、まるで岩に編み込まれた輝くクモの巣のように見える。金を含む石英の鉱脈が見つかるのは、山の形成などによる圧迫や変形に多くさらされた地殻の内部だ。 圧迫され、歪み、断片化されたこうした領域には、多くの断層がある。地震で断層が壊れると、高温の熱水(金の粒子を含んでいることがある)が亀裂に流れ込み、冷えることによって、金を含む石英の鉱脈ができる。 「通常は、地震が起き、こうした熱水が数千回から数万回にわたって押し寄せることで、長い時間をかけて造山型金鉱床が形成されるのです」とボイジー氏は言う。 金の粒子が石英の鉱脈に入り込むこと自体は、特に意外ではない。しかし、金は小さな粒子が広く散らばって見つかるよりも、大きな金塊で見つかる場合が多い。 「石英の中に、これほど大量の金が固まって存在しているというのは不思議です」と、スウェーデン、ストックホルム大学の鉱床地質学者イアン・ピトケアン氏は言う。氏は今回の研究に関わっていない。大量の金の粒子を特定の場所に集める力が働いているはずだが、それはいったい何なのだろうか。 石英自体にもまた、奇妙なところがある。石英はケイ素と酸素だけでできている単純な鉱物だが、一般的な鉱物の中では唯一、結晶が中心対称性をもたず、ゆがんだ構造をもっている。特定の条件下では、石英内部の電気的な構成もまたアンバランスになるため、それによって電気が生まれるという奇妙な現象が起こるわけだ。 石英は、それ自体でスパークを起こすことはない。しかし、上から踏みつけるなどして結晶に力を加えると、電場を発生させる。この現象は「圧電効果」として知られており、力を加えるほど効果も大きくなる。「結晶が割れるほど強く叩けば、可能な限り最大の電圧(電場)を得ることができます」とボイジー氏は言う。