「こんなこと許されるの?」調査委員会が認定した「いじめ」は裁判で一転否定、どん底に突き落とされた母親の怒り 命を絶った娘のために闘い続けた11年
ある日突然、わが子が自ら命を絶った。しかも、いじめを受けていたかもしれない。あなたが親ならどんな行動を取るだろうか。 【写真】児童が「わたしは死ねばいいのに」と記し提出したノート 担任が花丸を付け返却 奈良市立小、複数のいじめ認定 23年
記者会見で子どもへの思いを語る、学校やいじめた側を相手取って裁判を起こす―。ニュースで取り上げられるそんな姿は、遺族として当たり前の行動のようにも映る。しかし、親の心には想像を絶するほどの悲しみや怒りが刻まれている。 11年前の3月28日、奈良県橿原市の中学校に通う女子生徒が仲間外れなどのいじめを受けたと訴え、自殺をした。母親(54)は、自ら原因を調べ、市を訴えた。亡くなって11年、娘の死と向き合い続けた理由はただ一つ。 「娘はなぜ死んだのか。真実が知りたい」(共同通信=酒井由人) ▽送られなかったメール「みんな呪ってやる」 春休みまっただ中の2013年3月28日。ソフトテニス部に入る中学1年の娘はいつもより早く起きてきた。 リビングに来るなり、ぽつりと一言。「ママ、今日(テニスの)試合やった」。急いで弁当の支度に取りかかった。 「朝ご飯食べ」 「いらん」 「いらんことないから。ママお弁当作るから、はよ用意しておいで」
「お弁当いらん」 「お弁当なかったら動かれへんくなるやんか」 反抗期真っ盛り。こんなやりとりをしながら、急ごしらえで食材を調理し、具材を弁当に詰めていった。 朝ごはんを済ませ、「行ってきます」と家を出た娘。後ろ姿に「気い付けて」と声をかけた。いつもと変わらない日常の一コマだった。 しばらくして家の電話が鳴った。 「娘さんいてはりますか?」 学校の先生からだ。どういうことだろう。家を出て、部活に向かっていると伝えた。 「どれぐらい前ですか?」 10~15分ほど前だったかな。あいまいな回答をすると、電話口の声が慌ててこう言った。 「娘さんがマンションから落ちたようです」 受話器を持つ手が震えた。 きっと2、3階から誤って落ちたんだ。だから大丈夫―。そう自分に言い聞かせながら、伝えられた病院に急いだ。だが、到着後に警察官から告げられたのは、7階からの転落だった。