「こんなこと許されるの?」調査委員会が認定した「いじめ」は裁判で一転否定、どん底に突き落とされた母親の怒り 命を絶った娘のために闘い続けた11年
報告書が公表されたその日、市役所で記者会見を開いた母親は、目に涙を浮かべ、集まった報道陣を前に声を振り絞った。「もし学校が娘の異変を伝えてくれていれば、最悪の事態を避けることができたのではないか。そう思い、大変悔しい思いでいっぱいです」 母親ら遺族は同じ年の9月、報告書の内容を基に、いじめをしたと認定された同級生らと橿原市を相手取り、奈良地裁に損害賠償を求める裁判を起こした。 ▽争点となったのは、調査で認められた「いじめの事実」 被告となった市と同級生らは裁判で、いじめ自体がなかったと主張。仮に報告書のようないじめがあったとしても、死に追い込む程度のものではなかったと訴えた。 「娘にしてやれることはこれぐらいしかない」。そう思って裁判所に足を運び続けた。しかし「いじめはなかった」など、被告側から発せられる言葉は遺族にとっては受け入れがたく、審理を見守ることだけでも精神的負担となった。
裁判の作戦を練るため、弁護団会議が何度も開かれた。出席を求められると、仕事を休むほかなかった。会議が夜遅くまでかかることもあり、そんな時は、子どもたちの晩ご飯を朝に作って家を出た。 一審は6年にも及んだ。調査委員会の報告書でいじめは認定されていたし、こちらの主張を聴く時の裁判長の反応もよく、手応えはあった。勝訴した時に備え、被告側に控訴断念を求めるオンライン署名を集めようと準備も始めていた。 ▽いじめの存在を否定した判決「調査委員会とは目的が異なる」 2021年3月、一部の同級生について母親が「納得できる形」での和解に至った。しかし、その5日後、他の生徒や市に対する訴訟で奈良地裁は「原告の請求を棄却する」との判決を下した。 地裁は、母親側が訴えたいじめの存在を「友人や部活の顧問の証言や陳述、調査報告書などをもって、ただちに仲間外しや無視があったとは認められない」とした。 当時の学校側の対応については、次のように指摘した。