日本人の有休消化率62.1%で「過去最高」では喜べない…「120%の台湾」や「111%の香港」との決定的な違い
■本当に効果が出る「働き方改革」 有休がとりやすい組織とするためにやるべきことは、筆者の本業である「働き方改革による労働環境改善」に他ならない。実際に改革先行企業で実践済の取組のうち、業種や組織規模を問わず効果があったものとしては、次のようなものが挙げられる。 ---------- ・高付加価値をもたらす事業に注力(=儲からない事業は抜本的に見直す)こと ・「残業は悪!」「絶対残業不可!」と認識統一し、大原則として残業を許可しない ・評価基準を、成果量(=アウトプット)から、時間当たりの成果(=効率性)に変える ・従業員や部署の業務をすべて棚卸し、重複しているものや投入リソースの割に創出価値が低いものなどを「見える化」したうえで、タスクを取捨選択する ・業務や顧客毎に「メイン担当」と「サブ担当」をつける「複数担当制」を実施し、情報共有&協力体制構築。どちらかが休んでも業務遂行できるようにする ・ベテラン従業員を中心に業務マニュアルを作成・共有し、属人化排除、業務平準化を図る ・システム化や自動化による省力化実施 ---------- ■「介護しながらでも働けるよ」と言えるか 人が休むのは、何も有休取得の際に留まらない。体調不良もあれば、家族の看護や介護など、本人の事情とは無関係の不可避の事情もある。中でも高齢化の進展により、家族の介護のために仕事を休まざるを得ないケースは今後ますます増加することは確実だ。 実際、各年齢階級の介護保険受給者数の合計と人口から計算すると、現在65歳以上の方の7人に1人、85歳以上の人で2人に1人が介護サービスを受けている。あなたの会社を最前線で支えているトップ営業も、匠のような技術者も、いつ家族が要介護状態になるか分からない。 そんな時、「介護で休まれたんじゃ、仕事が回らなくなる!」と文句を言うだけになるのか、「それは大変だね……でもウチなら、業務効率化ができているから、介護しながらでも仕事を続けられるよ」と言えるかは、不測の事態に備えられているかにかかっているのだ。 有休取得も同様。ぜひ、誰が休んでも仕事が回る仕組みを今から整え、誰にとっても働きやすい環境を実現していこうではないか。 ---------- 新田 龍(にった・りょう) 働き方改革総合研究所株式会社代表取締役 働き方改革総合研究所株式会社代表取締役。労働環境改善、およびレピュテーション改善による業績と従業員満足度向上支援、ビジネスと労務関連のトラブルと炎上予防・解決サポートを手がける。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。 ----------
働き方改革総合研究所株式会社代表取締役 新田 龍