日本の若者が幸せを感じない理由は?NHK「君の声が聴きたい」に寄せられた声
自分の子どもが何を考えて生きているか、迷わず答えられる親はいるのでしょうか。 学校のテストの話や部活の大会の話ではなく、心の中で考え込んでいること、誰にも言えないような悩み、何を感じ、どう思うのか。 【マンガ】3兄弟の母が痛感した「子供の話を聞く」の意味 「自分の子どもは幸せだ」と胸を張って言えますか? 2020年のユニセフによる「先進国の子どもの幸福度」の調査における「精神的幸福度」で日本は38カ国中37位という結果が発表されました。これを受け、NHKは2022年5月に「君の声が聴きたい」というプロジェクトを開始。 「若者たちが幸せを感じていないのはなぜか? 幸せを感じるには何が必要か?」をテーマに、番組には想像を超える数の声が寄せられました。 その「みんなの声」の一部をまとめた書籍『君の声が聴きたい』(双葉社)が2024年4月17日に発売されることを記念して、本書より抜粋紹介。第1回は番組を制作した背景や若者たちの声に直面した思いをお届けします。
NHK局内の有志によるプロジェクトとして開始
「君の声が聴きたい」の前身は「くうねるあそぶこども応援宣言」という局内の有志によるグループでした。 子どもをめぐる社会問題について部署を超えて情報共有をしたいという展望を持ちつつも、それぞれが本来の業務に忙しく、活動の維持が難しいことが課題でした。 そんななか、NHKが「組織内で横につながり、多様な専門性をもった職員が連携できる体制を作っていこう」という方針を打ち出したことで、「君の声が聴きたい」という大型プロジェクトが動き出しました。 初年度は2022年5月の9日間、40以上の番組が参加する異例の特別編成でキャンペーンを展開。反響が大きかったことから、2023年も同様の放送を実施。2024年で3年目を迎えます。
「誰かに自分の声を聴いてほしい」
声を募集しはじめた当初は、テレビ離れが進んでいると言われる若い世代がどれだけNHKに心を寄せてくれるだろうか、突然「君の声が聴きたい」と言われても戸惑うのではないのだろうかという不安がありました。 ところが結果的に初回だけで1万に及ぶ声が寄せられ、なかには非常に文字数の多いものや深刻なものも散見されました。 一つひとつの声に目を通すうち、切実に「誰かに自分の声を聴いてほしい」と思っている子どもたちの多さ、そして彼らの声を聴いてくれる人や場所が今の世の中には足りていないだという現実を痛感することになりました。 番組放送後は、主に10代を中心とした視聴者から非常に内容の濃い感想が届きました。 そこには「自分にも聴いてほしい声がある」「番組を見て、こういう気持ちを抱えているのは自分だけじゃないんだと気づけた」という声が多く見られました。 現代を生きる子どもたちは、心のなかにいろいろな声をもっています。けれど、「こんなふうに感じているのは自分だけなのでは?」「こんなことを言うと、周りに重い思いって思われるかも」「言ったとしても誰も自分を理解してくれないし、何も変わらない」などの思いから、なかなかその声が表面に出てくることはありません。 声にならない声を抱えながら、彼らはその日その日をなんとかやり過ごしているのかもしれません。
もしひとつだけ願いが叶うとしたら、あなたは何を願いますか?
声を募集するにあたり、番組から投げかけた質問は、 「もしひとつだけ願いが叶うとしたら、あなたは何を願いますか?」 「大人や社会に対して、言いたいこと、お願いしたいこと、こうしてほしいという言うことはありますか?」 の2つ。この質問を入り口として多種多様な声が集まり、その内容は子どもたちが直面しているあらゆる問題を浮き彫りにしていきました。 現在も番組公式サイトには声が寄せられています。 ◇『君の声が聴きたい』抜粋記事の第2回では、10代の誰にも言えない生の声を書籍より抜粋してお伝えします。第3回、第4回も後日公開予定。
NHK「君の声が聴きたい」プロジェクト