密集した建物の間を猛烈なスピードで迫ってくる…最新スパコンが出した「恐怖の津波シミュレーション」の中身
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
AIで津波予測はできるのか?
猛烈な揺れと津波に立ち向かう術はないのか。最近、注目されているのはスーパーコンピューターに加えて人工知能(AI)を活用した津波避難だ。 東北大学災害科学国際研究所や東京大学地震研究所、富士通、神奈川県川崎市はスーパーコンピューター「富岳」を使った津波シミュレーションをもとにアプリを開発中で、川崎市で子どもも高齢者も参加して実証実験を行った。 富岳には約2万件の想定津波シナリオが入り、地図上の3メートル間隔でいつ、どこに、どのくらいの浸水があるのかを数秒で予測する。都市の津波は複雑な動きをする。 津波からの避難は沿岸から離れることが原則であるが、都市域での津波の来襲方向は予想外になる。河川を逆流した津波が橋でせき止められたり、陸側からの津波が浸入することもある。 さらに、幅員の広い道路を通り、路地を遡上。密集した建物の間を猛烈なスピードで波が迫ってくることも想定しなければならない。 スマホがあればリアルタイムで予測を見ることができるうえ、登録した人同士が写真やコメントで危険箇所を知らせ合ったり、逃げ遅れた人がわかったりする仕組みがあるといい、3年後の実装を目指しているという。
東京も襲う巨大津波
東北大学災害科学国際研究所は、移動の困難な高齢者が逃げる手段として、企業と小型モビリティの開発も進める。 同研究所の今村文彦教授は「声をかけられて避難を始めたお年寄りが多くいた一方で、『あなたが津波にのまれたら申し訳ない』と若者と一緒に逃げるのを躊躇してしまう人もいた。高齢者が遠慮せず自力で避難できる環境を作ることも大事」と指摘する。 少子高齢化社会のもとでは年を追うごとに助けを必要とする人が増え、助ける側の人手は減っていく。小型モビリティは普段での活用があるが、路面の状態が悪くても運転ができるようにするなど災害時にも適用できる開発を目指している。 南海トラフ巨大地震に伴う津波は、首都・東京にも到達する。 島嶼地域の最大津波高は式根島で約28メートル▽神津島約27メートル▽新島約27メートル▽利島約17メートル▽八丈島約17メートル▽大島約16メートル▽母島約16メートル▽三宅島約16メートル▽父島約15メートル▽青ヶ島約14メートル▽御蔵島約6メートルに達すると想定されている。区部の最大津波高は、江東区で2.63メートル▽中央区2.42メートル▽品川区2.38メートル▽港区2.37メートル▽大田区2.25メートルと予測されている。 最も危険なのは、防潮堤があるから津波はここまで来ないだろうと安心してしまうことだ。地震が想定より大きければ防潮堤に亀裂が入ったり、津波で漂流した船がぶつかってダメージを受けることもある。 先に触れたように、津波から身を守るためには「1分でも早く、1メートルでも高く」避難することが欠かせない。そのためには、いつでも避難できるだけの準備と避難先の場所を想定し、最新の情報にも注意していくことが求められている。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)