″最強兄妹″の夢はロスへと続くのか…阿部詩「絶対女王が密かに抱えていた腰痛トラブルと重圧」
会場に響き渡る「ウタ」コールの大合唱。だが残酷にも、それは勝者を称えるためのものではなかった。 【本誌未掲載カット】まさかの2回戦で…礼を終えて人目をはばからず大号泣する阿部詩の姿 パリ五輪柔道女子52㎏級代表で連覇を目指していた阿部詩(24)が、2回戦でウズベキスタンのディヨラ・ケルディヨロワ(26)にまさかの一本負け。敗戦を受け入れられず、阿部は礼を終えた後、人目をはばからず大号泣した。 「ケルディヨロワ選手は最後、右手で阿部選手の脇のあたりを差し、左手を背中に回して抱きかかえるようにして投げた。阿部選手がそれまで防いでいた接近戦へと持ち込み、そこしかないタイミングで谷落としを決めました。ケルディヨロワ選手が見事だったとしか言いようがありません」(天理大学柔道部監督で、ロンドン五輪男子100㎏級代表の穴井隆将氏) 兄・一二三(26)と同日金メダル獲得の快挙を達成した東京五輪から3年。追われる側になったことで、若き女王は心身ともに追い込まれていた。 阿部と同じ52㎏級でバルセロナ五輪に出場し、銀メダルを獲得した溝口紀子氏はあえて苦言を呈す。 「厳しい言い方になりますが、試合後に号泣している姿に自己コントロールができないメンタル面の不安定さが見られました。己を律するメンタルコントロールを見直す必要があったのではないでしょうか。 身体のコンディショニングも万全ではありませんでした。東京五輪後の’21年秋に両肩の手術をしましたが、回復期間をとれないまま同年10月の全日本選抜体重別選手権に出場していた。昨年秋には腰痛も患っており、満身創痍の状態だったのです」 棄権を除けば、’19年11月以来、約5年ぶりの敗戦となった。どの大会よりも結果が求められる五輪、ましてや兄妹連覇がかかった大一番での敗戦はあまりにショックが大きい。 だがしかし、絶対女王になる前の阿部は、負けを糧にして這い上がってきた柔道家だった。夙川学院中学校・高等学校時代の彼女を指導し、現在は佐久長聖中学・高等学校の柔道部で監督を務める垣田恵佑氏が語る。 「中高時代を知る人間に言わせれば、あいつは″努力の人″。決してエリート街道を歩んできたわけではない。高校1年の全国高校総体では、初戦で敗退しています。けれど、彼女は敗戦を受け入れて強くなった。同年のグランドスラムでは準優勝し、翌年の同大会で優勝したのです。パリでの敗戦で阿部詩は、さらにもう一回り大きく成長するはずです」 2大会連続となる金メダルを獲得した兄・一二三はインタビューで、「このままで終わるような妹ではない」とエールを送った。長年柔道を取材するスポーツライターが打ち明ける。 「パリで連覇を達成して引退。交際が報じられた一般男性と結婚かという話もありましたが、叶わなかった。兄のエールに応え、兄妹で4年後のロス五輪の頂点を目指すはず。それが日本の柔道界にとっても、柔道家・阿部詩にとってもベストウェイだと思います」 ″最強兄妹″の夢は4年後、アメリカで大輪の花を咲かす。 『FRIDAY』2024年8月16日号より
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