タレント・彦摩呂さんが「粉瘤」手術を公表、症状・原因・治療方法を医師が解説
炎症性粉瘤の受診科目
編集部: 炎症性粉瘤が疑われる場合の受診科目を教えてください。 竹内先生: 炎症性粉瘤が疑われる場合は、皮膚科を受診しましょう。できるだけ炎症が起こる前の、粉瘤の時点で受診するようにしてください。 粉瘤は自然治癒が難しい疾患です。治療を行わないと、炎症が悪化して患部が腫れたり痛んだり、さらには破裂したりなど、病状が悪化してしまう可能性があります。 しかし「ただのできものだから自然に治る」と自己判断して、治療が遅れて悪化させてしまう患者さんが多いようです。病態の進行を食い止めるためにも、できるだけ早期に受診しましょう。薬の処方や手術などの治療は病院でしかできません。 また、粉瘤ができると気になるものですが、触ったり潰したりするのはやめましょう。粉瘤が割れて内容物が粉瘤の外に漏れたり、開口部から細菌が侵入したりして、病態が悪化する可能性があります。 編集部: 炎症性粉瘤はどのように診断しますか? 多くの場合、視診です。粉瘤が深部まで到達していたり大きく広がっていたりする場合はCTやエコーなどの画像検査を行うこともあります。
炎症性粉瘤の治療方法
編集部: 炎症性粉瘤の治療はどのように行われますか? 竹内先生: 炎症性粉瘤の治療では主に、内服薬、切開法、くり抜き法の3種類が行われます。内服薬を用いて保存療法を行う場合、痛みには痛み止めの薬、炎症には抗生物質を処方して様子を見ます。 しかし、炎症性粉瘤の原因の大半は、皮脂や角質などの内容物が皮膚内に漏れて異物反応を起こすパターンであり、細菌感染ではありません。 そのため、多くの場合は、抗生物質を服用しても治療の効果は限定的で、根本的な治療にはなりにくいようです。それでも、細菌感染の予防や感染拡大の予防には有効であるため、抗生剤の服用は重要です。 一方で、炎症性粉瘤の原因が粉瘤の開口部から細菌が感染した場合であれば、抗生物質は治療にとても有効です。炎症が軽い場合は、このような内服薬を用いた保存療法で炎症が治まることもあります。 しかし、炎症が進んでいる場合は、あまり効果がありません。薬を飲んでも炎症期から感染・膨張期や破裂期へ進んでしまうこともあります。 その場合は、破裂したあと数か月たってから粉瘤を取り除く手術が必要になります。治療が長期間になるうえに、痛みも長期間続くことになるので、あまりおすすめしません。多くの場合、根本的な治療には粉瘤の袋を取り除く治療が必要です。 編集部: どのような場合に、切開法を行いますか? 竹内先生: 粉瘤の中に膿が溜まって炎症や腫れが強くなっている場合は、切開法を行うことがあります。メスで粉瘤を切開して、中に溜まっている膿や皮脂や角質を取り除きます。これらの内容物を取り除くことで、一時的に炎症や腫れを抑える方法です。 膿や皮脂や角質を取り除くことでゼロにはならないものの、一般的には痛みが引きます。 しかし、粉瘤の袋は残っているので、いずれはまた治療を行わなければなりません。 編集部: くり抜き法について詳しく教えてください。 竹内先生: 内服や切開法で症状を抑えることはできますが、粉瘤の袋は残ったままです。根本を治療するためには、袋を取り除かなければなりません。そのために、くり抜き法を行います。なお、くり抜き法は手術です。 くり抜き法では、まず粉瘤に穴を開けて膿や皮脂や角質をすべて抜き取ります。そして、粉瘤の袋もすべて抜き取ることで、根本的な治療ができます。 問題点は、粉瘤の炎症が強いと、袋と皮膚が癒着してしまうため、すぐに手術できないことです。炎症が落ち着いてから数か月かかることもあります。軽めの炎症であれば、問題なく手術できます。 このように、根本的な治療を行うためにはくり抜き法が必要です。そして、くり抜き法を行うには炎症が少ない状態が望ましいため、炎症が進行する前に治療を開始することが望ましいのです。できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。 くり抜き法を行えば縫合する必要もなく、炎症の引きも回復もとても早いため、治療期間も痛む期間も短く済みます。