世界ランキングツアー “格下”英国ツアーが承認されて、リブゴルフの申請が却下されたのは何故なのか
クラッチ・プロ・ツアーが世界ランキングの対象となった理由
一方で、リブゴルフ選手が聞き逃すことができないニュースも飛び込んできた。 リブゴルフは世界ランキングをつかさどるOWGR(オフィシャル・ワールド・ゴルフ・ランキング)に、世界ランキングの対象ツアーとして「認めてほしい」と2022年7月に申請を提出。しかし、昨年10月、OWGRはリブゴルフからの申請を「世界の他の24のツアーとリブゴルフをフェアに比較することは難しい」という理由で正式に却下した。そして今年3月、今度はリブゴルフ自身がOWGRに提出していた申請を正式に取り下げ、ゴルフ界を驚かせた。 現在、リブゴルフ選手の世界ランキングは低下の一途を辿っている状況だが、そんな折り、DPワールドツアーの下部ツアーであるチャレンジツアーの、そのまた下部に当たる英国のクラッチ・プロ・ツアーが、世界ランキングの対象ツアーとして新たに承認された。 クラッチ・プロ・ツアーは別名「ミズノ・ネクスト・ジェネレーション・シリーズ」とも呼ばれており、男子プロ部門以外に女子プロ部門、アマチュア部門、ジュニア部門なども行なわれている。男子プロ部門は今季17試合を開催予定だが、競技形式はリブゴルフと同じ3日間54ホールである。 競技形式が同じリブゴルフは世界ランキングの対象ツアーとは認められなかったのに、なぜクラッチ・プロ・ツアーは承認されたのか。それは両者に大きな違いがあるからだ。 リブゴルフでは予選カットが行なわれていないが、クラッチ・プロ・ツアーでは36ホール後に予選カットが行われている。そしてクラッチ・プロ・ツアーの成績上位者にはチャレンジツアーへの道が開け、その先には“一軍”のDPワールドツアー、さらにはPGAツアーへと上っていける可能性も開けている。 その「オープン性」こそが選手の出入りがきわめて限定的なリブゴルフとの違いであり、クラッチ・プロ・ツアーはOK、リブゴルフはNGという結果を招いた。 リブゴルフにとっては聞き流すことができないニュースであるはずだが、それでもクラッチ・プロ・ツアーが承認されたことに対してリブゴルフ選手から「ずるい」「不公平」といった不平不満の声が上がらなかったことには、逆に少々驚かされた。もはや世界ランキングに対する執着を捨て去ったのか、それとも出場可能なメジャー大会等で好成績を出すなど別の目標に向かう気持ちでいっぱいなのか。 いずれにしても、“口撃”や舌戦ではなくゴルフそのもので勝負するつもりになってくれているのであれば、それはプロゴルファーとしてあるべき姿としてファンからも歓迎され、応援されるのではないだろうか。 舩越園子(ふなこし・そのこ) ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。 デイリー新潮編集部
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